
左官のプロが解説 | そとん壁の出隅処理と仕上げパターンの選び方|25年の経験から語る施工のコツ
そとん壁の外壁を検討する際、カタログやサンプルだけでは分からない「施工の難しさ」や「経年での変化」について不安を感じていませんか?特に出隅(建物の角)の仕上がりや、 色ムラ ・ 白華 といった自然素材特有の現象は、実際に施工経験のあるプロでなければ語れない領域です

主要トピック「そとん壁 完全ガイド」
こちらの関連記事では、総合的に「そとん壁」について解説しています。この記事の後に是非ご一読下さい。
そとん壁の施工品質を左右する「出隅処理」と「仕上げ選び」
今回は、25年前のそとん壁黎明期から施工に携わり、メーカーの工法改良とともに技術を磨いてきた左官のプロ・谷澤雄司氏に、仕上げパターンの特徴、出隅処理の工夫、白華対策まで、実務で培った知見を伺いました。グラスファイバーメッシュ導入前のクラック対応から、コーナー定木の着色といった現場ならではの工夫まで、建築主や設計者が知っておくべき「施工品質を左右するポイント」が詰まっています。
谷澤雄司が語る|そとん壁25年の施工経験と工法改良の歴史
外壁を「そとん壁」にしようかと考えていて、色々調べているの。そとん壁について教えて。
25年くらい前かな、初めて見た時は衝撃を受けた。何というか目新し材料でとても斬新だった。でも当初は工事できる人がいなくて、メーカーが講習会を熱心に開催していた印象がある
比較的新しい壁材なのね。
工法も当初とは変わってきたように思う。今は グラスファイバーメッシュ を伏せ込んでいるので、かなり割れにくくなったが、当初は クラック が出ていてトラブル対応していた。ラス のジョイントなんかで出ると直すのが難しかったよ。
今は割れ難くなったのね。
塗り壁だから「クラックは宿命的な関係」とメーカーも言っているけれど、素材の改良、工法の改良、職人の技術の向上を謳っている。とても熱心で好感の持てるメーカーという印象だね。
トラブルにも真摯に向き合ってきたのかな。
しっかりと工法が確立したし、下塗り材 も 仕上げ材 もだいぶ良くなった。
デザインはどんなものが選べるの?
どれが人気のパターンなの?
人気なのは、 かき落とし とスチロール鏝の仕上げかな。 スチロール鏝 の場合は抑えて終了でなく、職人の技量やセンスで壁の印象もかなり変わる。一条とか三条とかさざ波は技量の差が出にくい印象。
他にはどんな点に気を付けているの?
かき落としの場合は、出角をどう上手く処理していくか、とても気を使うよ。どう納めるかをいつも考えている。
かき落としは難しいのね。
色味が写らないように コーナー定木 も着色したり工夫したりしている。それから塗り圧が薄くなり過ぎないように かき落とし の具合も調整しながらきれいなラインになる様に注意している。
角の部分は要注意ね。
仕上がりに関してはトラブルになりやすいので、冒頭にも言ったように、綿密な打ち合わせする事とカタログなどの仕様を良く読み込むことかな。
資料を熟読するわ。
あとは施工する時期によって色味が変わりやすいという点も注意が必要。これはそとん壁に限らず 漆喰 全般に起きる事だけれど白華現象が起きる場合がある、工事の際の気象条件などで白く浮き出て色ムラになる事があるんだ。だから 白華 によるムラが気になるという人は濃い色は避けて、淡い色合いにした方が良いだろう。
そうなのね、事前に確認しておく必要があるわね。
高品質な壁材なのね。
質実剛健なイメージかな、意匠(デザイン) は一般的なものが多い。渦巻きというパターンがあるけれど、それ以外は面白いデザインに仕上げるのはやや難しいから、色やパターンには拘りないけど、品質にこだわりたいという人には良いと思うよ。
カラーは薄い方がおすすめでしたね。
それこそ昔は施工仕様を守らない建設屋には、とメーカーが出荷しない何て事もあったみたい(笑)今はそんな事ないだろうけどね。それぐらい拘りのあるメーカーの商品かな。
ありがとう、そとん壁の品質とカラーやパターンについて良く分かったわ。
この記事のまとめ|出隅処理と色選びが仕上がりを決める
谷澤さんのインタビューから見えてきたのは、そとん壁の品質は「施工段階の細部へのこだわり」で大きく変わるという事実です。特に以下の3点が重要なポイントとなります。
1. 出隅処理は職人の腕の見せ所
コーナー定木の色が透けて見えないよう着色処理を施し、塗り圧を均一に保ちながらきれいなラインを出す——この工程一つで外観の印象が変わります。かき落とし仕上げでは特に出隅の処理難度が高く、事前の打合せと職人の技量が仕上がりを左右します。
2. 白華現象は施工時期と色選びで抑制
自然素材ゆえに避けられない白華ですが、濃色を避けて淡色系を選ぶこと、そして施工時期の気象条件を考慮することで、視認性を大幅に抑えられます。冬季の低温多湿時は特に注意が必要で、メーカー仕様の遵守が長期的な美観維持につながります。
3. 工法改良で割れにくさは格段に向上
初期のそとん壁はクラックが課題でしたが、グラスファイバーメッシュの伏せ込みや素材改良により、現在は安定した品質が実現されています。メーカーの真摯な改良姿勢と、職人の技術向上が相まって、20年先を見据えた外壁材として信頼できる選択肢になっています。
施工依頼時のチェックポイント
そとん壁を採用する際は、以下を施工業者と確認しましょう:
- 仕上げパターンの特性理解:かき落としとスチロール鏝では難易度と仕上がりが異なる
- 出隅処理の方法:コーナー定木の着色や塗り圧調整の工夫があるか
- 色選びと施工時期:白華リスクを踏まえた淡色推奨と、気象条件の配慮
- カタログ・仕様の熟読:メーカー推奨の施工方法を守る業者かどうか
- 実績とメーカー講習受講歴:工法改良の経緯を理解している職人か
自然素材の風合いと高い機能性を兼ね備えたそとん壁。施工品質を左右する「見えない部分の工夫」を理解し、信頼できる職人に依頼することで、長く愛せる外壁が実現します。仕上げの質感や色選びで迷った際は、経験豊富な左官職人への相談をお勧めします。

主要トピック「そとん壁 完全ガイド」
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合同会社 鏝志(こてじん) 代表
対応エリア:岐阜県、愛知県、三重県、但し条件合えば どこでも行きます。
対応できる工事:漆喰(内装)、珪藻土,壁の補修(内装),リフォーム工事(内装),漆喰(外壁),モルタル,壁の補修(外壁),リフォーム工事(外壁),ジョリパット(外壁),大壁工法,しらす壁,そとん壁,かき落とし,洗い出し,タイル工事,一般左官工事,塗装(ペンキ),乱形石
お薦めのデザイン:コンクリート系、フラット系
備考:バンドに夢中で大学中退後もまともに就職してなかったが、
当時のメンバーに薦められて、彼の勤めていた塗装店に職人として入社。
三年経った頃、当時の取引先社長から「ウチの会社で営業してみないか?」
と誘われ転職する。
そこの会社はマンションの大規模修繕を営む会社で、
その頃に塗装工事のノウハウを叩き込まれる。
10年勤めた頃、仕事への方向性が合わなくなり退社。
次の勤め先を決めずに退社したので、一年ほど人材派遣に頼りながら生活し、
その後左官工事店に入社。そこで左官工事を学ぶ。
8年勤めた頃に残念ながら倒産し、それを機に独立し現在に至る。
<プロフィール>
愛知県江南市出身、巳(み)年、てんびん座
【好きなもの】麻婆豆腐、ハイボール、音楽:new jeans、バイクDucati:mh900e、車:landrover:defender、脚本家:宮藤官九郎、映画:役所広司 すばらしき世界
【苦手なもの】月曜日の朝、冬場の静電気、ホヤの食感、デリカシーの無い人、食券機の店
【マイブーム】中華鍋を使った料理を作る事
