
左官のプロが解説 | そとん壁の白華現象と補修実務|気温・湿度管理と酸性洗浄の実践
そとん壁を施工した後、あるいは補修を検討する際に最も頻繁に遭遇するトラブルが「白華現象(エフロレッセンス)」です。特に冬場の施工や濃色の外壁で目立ちやすく、「色ムラが出てしまった」「白く浮き出てきた」という相談は少なくありません。自然素材ゆえに完全には避けられない現象ですが、適切な対処法と施工時期の選定によって、その影響を最小限に抑えることが可能です。

主要トピック「そとん壁の外壁 完全ガイド」
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今回は、補修工事の経験が豊富な左官のプロ・間宮秀樹氏と生田泰幸氏に、白華現象の発生メカニズム、気温・湿度・天候の影響、酸性洗浄(サンポール)による色ムラ調整、白華防止剤や乾燥促進剤の活用、そして補修時の色合わせや定木処理まで、トラブル発生後の是正措置と予防策の実務を伺いました。「濃色を選びたいけど白華が心配」という方に必読の内容です。
白華現象(エフロレッセンス)とは——自然素材の宿命と発生条件
白華現象とは、モルタルや漆喰、そとん壁などの塗り壁材に含まれる可溶性成分(主に炭酸カルシウム)が、水分とともに表面へ移動し、乾燥後に白い結晶として析出する現象です。自然素材の無機質な塗り壁では避けられない特性であり、特に以下の条件で発生しやすくなります:
- 気温が低い時期:乾燥が遅く、水分が長時間壁内に留まる
- 湿度が高い時:夜露や霧、雨による水分供給
- 濃色の仕上げ:白華が視覚的に目立ちやすい
- 施工直後の急な天候変化:乾く途中で雨や霧にさらされる
間宮氏が強調するのは「白華は自然素材である証」であり、発生そのものを恐れるのではなく、「どう対処するか」「どう予防するか」という実務知を持つことの重要性です。

左官のプロ 間宮秀樹・生田泰幸が語る|白華対策と補修の実践知
そとん壁の補修について教えて。間宮さんと生田さんはそとん壁の工事は多い?
うちは結構やっている方かな。
ウチはたまに位かな。
補修で気を付けているのはどんな事。
対策は何かあるの?
サンポールなど酸性の液体をかけてムラを丁寧に落としていく。
確かに色ムラがあると気になるかも。
乾く途中で雨や霧などで水分が当たったり、とにかく寒い時期には起こりやすいから注意が必要だね。
補修だと色合わせも大変そう。
昔、モルタル 下地からの補修で白華が起きた記憶がある、気温の要素が大きいので補修は季節を選んだ方が良いね。
冬場は避けた方が良さそうね。
専用の白華防止剤も出ているね。割と価格は高めだけれど。
濃い色の外壁で寒い時期の工事は白華防止剤も検討してみた方が良さそう。
他には白華を抑える方法があるの?
冬場は乾燥が遅いからね、乾燥の促進剤などを加えると押させられるかも知れない。
乾きのスピードが重要なのね。
あと角の部分を強くぶつけたりすると、壁材が剥がれて定木が見えてきてしまう場合がある、これはそとん壁に限らず大きな 骨材 の外壁の宿命かな。だからそんな時は、壁の補修の前に定木も同系色で塗ると綺麗に補修できる。
定木は白かグレーだったわね。それ以外の時はそんな工夫をしているのね。
樹脂でなく無機質の自然素材なのでパターンによっては、濃い色だとムラがでる場合があるので、打合せはしっかりした方が良い。
濃い色の外壁の場合はしっかり打合せするわ。
それから薄い色だと、どうしても 経年劣化 で汚れが気になる場合があるけど、洗浄や塗り直しで綺麗にできる。
ボロボロ落ちるというネット記事もあったわ。
ボロボロといっても外壁の仕上げが自体 かき落とし だと、施工直後だと掻いた部分が表面に付着している場合がある。自然に雨風で落ちるのでまったく問題はないよ。最初は柔らかくて徐々に硬化してくる。自然素材の塗り壁の特徴だね。
そとん壁の補修について良く分かったわ。
そとん壁を使うと重厚感のある外壁になる。好きな方には堪らない映える外観の住宅になるね。
そうなんだ。
外壁だけでなく、内装材に使っても面白い素材だよ。
ありがとう、また教えてね。
この記事のまとめ|白華は管理できる——気象条件と補修技術で制御
間宮氏・生田氏のインタビューから見えてきたのは、白華現象は「完全には防げないが、適切な対処と予防で管理できる」という事実です。以下の5点が特に重要なポイントとなります。
白華は寒い時期に発生しやすい——気温・湿度・天候が鍵
白華が最も起きやすいのは冬場の施工:
- 低温:乾燥速度が極端に遅くなる
- 高湿度:夜露や霧、結露による水分供給
- 乾く途中での雨・霧:表面が濡れることで可溶性成分が移動
間宮氏の経験では、特にかき落とし仕上げで冬場施工時に白華が出やすく、モルタル下地からの補修でも同様の傾向が見られました。対策の第一は**「季節を選ぶ」**——補修工事は可能な限り春〜秋の温暖で乾燥した時期に行うことです。
酸性洗浄(サンポール)で色ムラを調整
白華が発生してしまった場合の対処法:
軽度〜中度の白華:
- サンポールなど酸性の液体で丁寧にムラを落とす
- 炭酸カルシウム(アルカリ性)を酸で中和・溶解
- 洗浄後は十分な水洗いと乾燥が必須
注意点:
- 濃色の場合、洗浄後に色が戻らない場合がある
- 小面積でテスト施工してから全体へ展開
- タイル周囲など取り合い部でも白華が出やすい
酸性洗浄は「出てしまった白華」への対症療法ですが、適切に行えば美観を相当程度回復できます。
白華防止剤と乾燥促進剤の活用
予防策として使用できる材料:
白華防止剤:
- 専用の防止剤が市販されている
- 価格は高めだが、濃色×冬場施工の場合は検討価値あり
- 生田氏の指摘通り、コストとリスクのバランスで判断
乾燥促進剤:
- 冬場の乾燥が遅い状況で添加
- 乾燥速度を上げることで、水分が長時間留まるリスクを低減
- 間宮氏が提案する「乾きのスピードを制御する」手法
ただし、これらは「魔法の解決策」ではなく、施工時期の選定と気象管理を優先し、補助的に使うのが合理的です。
定木の補修前着色と骨材剥がれへの対処
補修工事で見落としがちなのが定木の色:
- 角を強くぶつけると、壁材が剥がれて定木(白orグレー)が見えてしまう
- 補修前に定木を同系色で塗装しておくと、仕上げ後の透けが目立たない
- これは大きな骨材を使う外壁全般の「宿命」であり、そとん壁に限らない
骨材が剥がれた箇所の補修では、色合わせも重要です。施工時の材料ロットと補修時のロットが異なる場合、微妙な色差が出るため、小面積でのテスト→全体展開が基本です。
濃色と薄色のメリット・デメリットを理解して選ぶ
色選びは白華リスクに直結します:
薄色(淡色):
- 白華が出ても視覚的に目立ちにくい
- 経年の汚れは気になる場合があるが、洗浄や塗り直しで対応可能
- 長期安定を重視するなら第一選択
濃色:
- 陰影が美しく、重厚感がある
- 白華や色ムラが相対的に目立ちやすい
- 採用する場合は「春〜秋施工」「白華防止剤検討」「淡色との複合(アクセント使い)」
間宮氏が強調するのは、「樹脂でなく無機質の自然素材なので、パターンによっては濃色でムラが出る」という前提を理解し、打合せをしっかり行うことです。
補修・採用時のチェックポイント
白華リスクを最小化し、美しい仕上がりを長期維持するために:
補修時:
- 季節選定:冬場を避け、春〜秋の温暖・乾燥期に
- 気象条件確認:施工日の気温・湿度・降水確率をチェック
- 酸性洗浄の準備:白華が出た場合の対処法を事前に確認
- 色合わせテスト:小面積で材料ロット差を検証
- 定木の着色:補修箇所の定木を同系色で事前処理
新規採用時:
- 色選び:白華リスクを考慮し、濃色は慎重に(淡色が安定)
- 施工時期の調整:可能なら春〜秋に工程を組む
- 白華防止剤の検討:濃色×冬場なら採用を相談
- 打合せの徹底:自然素材の特性とムラの許容範囲を施工者と共有
- モルタル下地の品質:下地からの水分供給を最小化する仕様確認
補修後の維持管理:
- 白華は自然に消える場合もあるが、気になるなら早期の酸性洗浄
- 経年で再発する場合は、雨仕舞い(庇・水切り)の見直しを
- 洗浄→コーティング→再発防止の循環的メンテナンス
そとん壁の白華現象は、自然素材である証であり、完全にゼロにはできません。しかし、気温・湿度・天候を読み、適切な時期に施工し、発生時には酸性洗浄や防止剤で対処する——この実務知を持つことで、「白華が怖いから諦める」のではなく、「白華をコントロールしながら自然素材の風合いを楽しむ」選択が可能になります。
補修や色選びで迷った際は、経験豊富な左官のプロに相談し、季節・色・下地を含めた総合的な計画を立てることをお勧めします。

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合同会社 伊良湖屋 代表
対応エリア:高浜市、碧南市、半田市、西尾市など愛知県内全域、その他(岐阜、三重など一部)
対応できる工事:漆喰、珪藻土、モルタル外壁、内装工事、外構工事、屋根工事
お薦めのデザイン:コンクリート系, スタッコ系などシンプルなデザイン。
備考:某自動車ディーラーの営業職を経て、2000年に株式会社川幸に入社。以降は新築、リフォーム、補修などの内外装工事に携わり2020年に独立。左官だけでなく屋根など住宅工事全般の多岐に渡る業種に精通する。週末、子供を連れて近所に釣りに行くのが趣味。
プロフィール:
愛知県高浜市、子(ね)年、さそり座
【好きなもの】カニ、ハイボール、釣り、野球観戦、かわぐちかいじの漫画、魚捌き系youtube動画、地元の祭りに参加すること
【苦手なもの】脂ののった刺身、酢豚のパイナップル、ラッキョウ、猫、筆ペン
【マイブーム】土曜日の夜にラーメンを食べに行く
