
砂壁のDIY補修と下地処理の基本|クロス・塗り替えの可否を徹底解説
和室の壁に触れると、ポロポロと粉が落ちてくる——。そんな悩みを抱えている方は少なくありません。「ニトリの壁紙を貼れば簡単に解決できるはず」と思いきや、実はそこに大きな落とし穴が。その壁、本当に砂壁ですか?繊維壁やじゅらく壁との違いを知らずにDIYを始めると、壁ごとめくれる惨事になることも。本記事では、左官職人の知見をもとに、砂壁の正体から正しい下地処理、クロスや珪藻土への塗り替え方法まで徹底解説。「どうにかしたい」その気持ちを、確実な成功へと導きます。

主要トピック「砂壁とは何か?どうにかしたい和室リフォームのポイントを左官のプロが解説」
総合的に「砂壁」について解説しています。この記事の後に是非ご一読下さい。

砂壁を「どうにかしたい」その前に|壁材の種類と見分け方を正しく理解する
和室の壁がボロボロと崩れてきて「どうにかしたい」と感じている方は少なくありません。しかし、その壁を安易に「砂壁」と判断してDIYに取りかかると、思わぬ失敗を招く可能性があります。昭和から平成初期にかけて多用された塗り壁には、実は複数の種類が存在し、それぞれ成分や性質が大きく異なるからです。
砂壁・繊維壁・じゅらく壁・土壁の違い
砂壁は、ふるい分けされた均一な粒子(砂や鉱物、貝殻、ガラス片など)を着色し、樹脂で固めた仕上げ材です。表面は硬くザラザラとした質感で、粒がはっきりと見えるのが特徴です。触ると骨材そのものの硬さを感じ、漆喰や珪藻土よりも表面強度が高いとされています。
繊維壁は、化学繊維やパルプ、紙の繊維、綿などを糊で固めた壁材で、砂壁とは別物です。表面はフワッと柔らかく、キラキラとした装飾繊維が混入していることが多いため、見た目でも判別できます。ただし一般の方は「ボロボロ落ちる壁=砂壁」と認識していることが多く、実際には繊維壁であるケースも少なくありません。
**じゅらく壁(京壁)**は、施工しやすくコテ跡が目立ちにくいことから、左官職人にも支持されてきた和風塗り壁です。かつては「本じゅらく」というブランドが主流でしたが、現在は四国化成の「ジュラックスC」や富士川建材工業の「京壁」が二強として使われています。和室に適した落ち着いた色調が揃っていますが、パステル調などの洋風カラーは少なく、汚れが落ちにくいという弱点もあります。
土壁は、泥に砂と藁を混ぜて塗る伝統的な下地材です。小舞(竹を格子状に組んだもの)に塗り重ねる荒壁→中塗り→仕上げという三層構造が基本で、砂壁やじゅらく壁、漆喰はその「仕上げ層」として施工されます。つまり土壁は下地であり、砂壁は仕上げ材という役割の違いがあります。
見分け方のポイント
触感では、砂壁は硬く粒がはっきり、繊維壁は柔らかく繊維感があり、じゅらく壁はフワッとしてコテ跡が滑らか、土壁は泥のような風合いで藁が見えることがあります。また、築40〜50年以上の住宅では土壁下地の可能性が高く、築30〜40年程度であればプラスターボード下地にじゅらく壁や砂壁が塗られているケースが多いとされています。
リフォームやDIYを始める前に、まずは壁材の種類を正しく見極めることが、失敗を防ぐ第一歩です。
この項のまとめ
- 砂壁は均一な粒子を樹脂で固めた仕上げ材で、表面が硬くザラザラしており、粒がはっきり見えるのが特徴
- 繊維壁は紙や綿の繊維を糊で固めたもので、フワッと柔らかくキラキラした装飾繊維が混入していることが多い
- じゅらく壁(京壁)は施工しやすくコテ跡が目立ちにくい和風塗り壁で、現在は「ジュラックスC」や「京壁」が主流
- 土壁は泥・砂・藁を混ぜた伝統的な下地材であり、砂壁やじゅらく壁は土壁の上に塗る「仕上げ層」として使われる
- 築年数と触感・見た目で壁材を見分けることができ、リフォーム前に正しく判別することが失敗を防ぐ鍵となる

砂壁DIYの基本|100均・ニトリの壁紙は直接貼れるのか?正しい下地処理の手順
近年、ニトリやホームセンター、100均ショップでも手軽に入手できる「貼ってはがせる壁紙」が人気を集めています。しかし、既存の砂壁やじゅらく壁にそのまま壁紙を貼るのは、実は非常にリスクの高い行為です。左官職人たちが口を揃えて警告するのは、「壁ごとめくれてしまう可能性がある」という点です。
「砂壁に貼れる壁紙」の真実
ニトリやホームセンターで販売されている壁紙の多くは、石膏ボードやビニールクロスの上に貼ることを前提としています。砂壁や繊維壁、じゅらく壁のような塗り壁は、経年劣化により糊や樹脂が弱っており、表面がボロボロと崩れやすい状態です。この上に直接壁紙を貼ると、壁紙の粘着力が古い壁材ごと引き剥がしてしまい、下地から大きく剥離するトラブルが発生します。
また、100均の壁紙シールやリメイクシートも同様で、粘着力が強いものほど壁材を傷める危険性が高まります。「簡単DIY」と謳われていても、下地の状態を無視した施工は、かえって修復費用を増大させる結果となるのです。
必須の下地処理手順
砂壁の上に壁紙を貼りたい場合、左官職人が推奨する正しい手順は以下の通りです。
手順1:既存壁の除去
まず、古い砂壁やじゅらく壁を完全に剥がします。ホームセンターで「壁剥がし剤」を購入すれば、DIYでも対応可能です。水を含ませて柔らかくし、スクレーパーなどで丁寧に削り取ります。この作業は粉塵が大量に発生するため、養生とマスクの着用が必須です。
手順2:シーラー処理
壁を剥がした後の下地(石膏ボードや土壁)には、必ずシーラーを塗布します。シーラーは下地を固め、次に塗る材料の吸い込みを防ぐ役割を果たします。土壁の場合は灰汁止めシーラーを使用し、灰汁の染み出しを防ぐことも重要です。
手順3:石膏系下地調整材の施工
シーラーが乾燥したら、石膏系の下地調整材(パテ)を薄く塗り、表面を平滑に整えます。この工程を省略すると、壁紙を貼った際に凹凸が目立ち、仕上がりが美しくなりません。
ベニヤ・石膏ボードを使った下地づくり
古い土壁や劣化が激しい砂壁の場合、既存壁を剥がさずにベニヤ板や石膏ボードを上から張る方法もあります。ただし、土壁にビスを打っても効かないため、間柱(柱と柱の間に入る縦木材)の位置を探してしっかり固定する必要があります。この作業は大工やリフォーム業者に依頼するのが確実です。
100均アイテムは、養生テープやマスキングテープ、スクレーパーなど補助的な道具として活用できますが、壁紙そのものを100均製品で済ませるのは耐久性の面で推奨できません。
下地処理を正しく行えば、ニトリやホームセンターの壁紙も美しく貼ることができます。手間はかかりますが、この工程こそがDIY成功の鍵なのです。
この項のまとめ
- ニトリや100均の壁紙を砂壁に直接貼ると、壁材ごと剥離する危険性が高く、クロスメーカーも推奨していない
- 正しい下地処理の手順は「既存壁の除去→シーラー処理→石膏系下地調整材の施工」の3ステップが基本
- 壁剥がし剤を使えばDIYでも古壁の除去は可能だが、粉塵対策として養生とマスクの着用が必須
- 土壁や劣化が激しい場合はベニヤ板・石膏ボードを新設する方法もあるが、間柱への固定が必要で大工やリフォーム業者への依頼が確実
- 100均アイテムは養生テープやスクレーパーなど補助道具として有効だが、壁紙本体を100均製品で済ませるのは耐久性の面で非推奨

砂壁から珪藻土・漆喰へDIY塗り替えは可能か|簡単な方法と費用・工期の現実
砂壁やじゅらく壁のボロボロとした状態を改善したいとき、クロス以外の選択肢として「珪藻土」や「漆喰」への塗り替えを検討する方も増えています。調湿性や自然素材としての魅力から、特に健康志向の高い層に人気です。しかし、DIYで塗り替えは本当に可能なのでしょうか。
砂壁を剥がさずに塗り替えできるケース・できないケース
左官職人の見解は明確です。「既存の砂壁やじゅらく壁の上に直接塗るのは避けるべき」というのが共通認識です。表面は一見しっかりしていても、新しく塗った材料の水分を含むことで、古い壁が下地から浮いて剥がれ落ちるリスクがあるためです。
ただし例外もあります。築年数が浅く、下地が石膏ボードでしっかりしており、既存の砂壁に浮きや剥がれが全く見られない場合は、シーラーで表面を固めてから薄塗りの下地調整を行い、その上に仕上げ材を塗ることも不可能ではありません。しかし、この判断は素人には難しく、結果的に「剥がしてから塗る」方が安全で確実です。
土壁が下地の場合は特に注意が必要です。土壁は水に弱く、風化して強度が低下しているため、上から塗り重ねても接着が不安定になります。築50年以上の古い住宅では、土壁下地である可能性が高いため、プロによる下地診断が推奨されます。
DIYで漆喰・珪藻土を塗る際の手順と難易度
ホームセンターには「DIY用珪藻土」や「初心者向け漆喰」といった製品が豊富に揃っています。これらは樹脂が配合されており、プロ用よりも扱いやすく設計されています。
基本的な施工手順は以下の通りです。
手順1:古壁の除去
壁剥がし剤を使って既存の砂壁を完全に剥がします。6畳の和室であれば、1人で1日程度の作業です。
手順2:下地処理
シーラーを塗布し、灰汁止めや吸い込み防止を行います。土壁の場合は専用の灰汁止めシーラーが必要です。
手順3:下地調整
石膏系の下地調整材を薄く塗り、表面の凹凸を整えます。この工程を丁寧に行うことで、仕上げ材の美しさが大きく変わります。
手順4:珪藻土・漆喰の塗布
コテを使って仕上げ材を塗ります。珪藻土は比較的柔らかく、コテ跡で模様をつけやすいため、DIY初心者にも扱いやすいとされています。一方、漆喰は硬化が早く、ムラなく塗るには技術が必要です。
難易度としては、珪藻土の方が漆喰よりもDIY向きです。ただし、コテの使い方に慣れていないと、ムラや厚みのバラツキが目立ちやすく、「思ったより難しい」と感じる方も少なくありません。
6畳和室のリフォーム費用目安(DIY vs プロ施工)
DIYで挑戦する場合、材料費は珪藻土で1袋(約3.3平米分)1,000円前後、漆喰で1缶1万円前後が目安です。6畳の和室(壁面積約30平米)であれば、材料費は3〜5万円程度で収まります。ただし、壁剥がし剤、シーラー、下地調整材、コテ、養生材などを含めると、合計で5〜8万円程度の出費となります。
一方、プロに依頼した場合、6畳和室で15〜20万円、工期は5〜7日が一般的です。古壁の除去、下地処理、仕上げまで一貫して任せられるため、仕上がりの美しさと耐久性は格段に高まります。
失敗しないための「プロに任せるべき工程」の見極め方
DIYで最も失敗しやすいのは「下地処理」です。シーラーの塗りムラ、灰汁止めの不足、下地調整の甘さは、すべて仕上がりに直結します。また、土壁下地の場合、どこにビスを打てば良いのか、どの程度の強度があるのかといった判断は、経験のない素人には困難です。
「仕上げ塗りだけDIYで挑戦し、下地処理はプロに依頼する」という選択肢も現実的です。下地さえ整っていれば、DIY用の珪藻土や漆喰は比較的塗りやすく、失敗のリスクも大幅に減ります。
砂壁のリフォームは、決して「簡単DIY」ではありません。しかし、正しい知識と手順を踏めば、自分の手で理想の空間を作り上げることも可能です。
この項のまとめ
編集後記
和室の壁がボロボロと崩れ始めたとき、つい「DIYで安く済ませたい」と考えてしまいますが、今回の取材を通じて、下地処理の重要性を改めて実感しました。左官職人の方々が口を揃えて「剥がしてから塗る」と強調される理由は、長年の経験に裏打ちされた確かな知恵です。ニトリや100均の壁紙をそのまま貼りたくなる気持ちもわかりますが、正しい手順を踏むことで、仕上がりの美しさも耐久性も大きく変わります。DIYに挑戦するなら、まずは壁材の見極めから。焦らず、丁寧に向き合うことが、理想の空間への近道なのかもしれません。
この記事に関連する「良くある質問」一覧
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質問: 砂壁と繊維壁・じゅらく壁の違いは何ですか?回答: 砂壁は均一な粒子を樹脂で固めた仕上げ材で表面が硬くザラザラしています。繊維壁は紙や綿の繊維を糊で固めたもので柔らかくキラキラした装飾が特徴です。じゅらく壁(京壁)はコテ跡が目立ちにくい和風塗り壁で、施工しやすさから左官職人に支持されています。
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質問: ニトリや100均の壁紙を砂壁に直接貼っても大丈夫ですか?回答: 直接貼るのは非常に危険です。砂壁は経年劣化で糊が弱っているため、壁紙の粘着力で壁材ごと剥がれてしまう可能性があります。必ず古壁を除去してシーラー処理と下地調整を行ってから壁紙を貼る必要があります。
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質問: 砂壁をDIYで珪藻土や漆喰に塗り替えることはできますか?回答: 可能ですが、既存の砂壁を完全に剥がしてから施工するのが基本です。古壁の除去→シーラー処理→下地調整→仕上げ塗りという手順を踏む必要があり、特に下地処理を丁寧に行うことが成功の鍵です。珪藻土の方が漆喰より初心者向きとされています。
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質問: 砂壁リフォームの費用と工期はどのくらいかかりますか?回答: 6畳和室の場合、DIYで材料費5〜8万円程度、プロに依頼すると15〜20万円で工期5〜7日が目安です。古壁の除去から下地処理、仕上げまでを含む費用で、使用する仕上げ材(クロス・珪藻土・漆喰)によって変動します。
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質問: 築50年以上の古い砂壁をリフォームする際の注意点は?回答: 下地が土壁の可能性が高く、土壁は水に弱く風化しているため上塗りは不向きです。また土壁にはビスが効かないため、クロス下地を作る場合はベニヤや石膏ボードの新設が必要です。プロによる下地診断を受けてから施工方法を決定するのが安全です。
