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そとん壁の性能を最大限発揮する

左官のプロが解説 | そとん壁の雨仕舞いと防水対策|開口部を守る3層防水の施工実務

そとん壁 を採用する際、最も気をつけるべきは「雨水をどう制御するか」です。 自然素材 ならではの 透湿性 と 防水性 を両立させるには、表層の仕上げだけでなく、見えない部分での多層防水と雨仕舞いの設計が不可欠。特に掃き出し窓や開口部周辺は、 クラック や雨漏りのリスクが高く、施工段階での対策が長期的な品質を左右します。

そとん壁完全ガイド

主要トピック「そとん壁の外壁 完全ガイド」

こちらの関連記事では、総合的に「そとん壁」について解説しています。この記事の後に是非ご一読下さい。

今回は、そとん壁の防水メカニズムを熟知し、現場で「割らせない・濡らさない」施工を実践する左官のプロ・稲熊サトシ氏に、3段階の防水処理、木定木を使った出隅の対面施工、日当たりに応じた乾燥管理と人数配置まで、実務で培った雨仕舞いのノウハウを伺いました。施工タイミングや清掃の工夫といった、カタログには載らない現場の知恵が詰まっています。

二重構造を活かすそとん壁の外壁

そとん壁の防水性能を支える「二層構造」と「雨仕舞い設計」

そとん壁が高い防水性を持つ理由は、細かい粒子の下地層と大きな粒子の仕上げ層による二層構造にあります。雨水は表層で拡散・流下し、内部に浸透しにくい一方、水蒸気は空隙を通って外へ抜ける——この透湿×防水のバランスが、結露や藻の発生を抑える鍵です。

しかし、この性能を活かすには「雨水の経路を設計する」という視点が欠かせません。特に掃き出し窓や開口部周辺は応力が集中しやすく、クラックから雨水が侵入すれば、下地まで影響が及びます。稲熊氏が強調するのは「仕上げの美しさ以前に、見えない部分で何重にも守る」という多層防水の思想です。

左官のプロ 稲熊サトシが語る|雨仕舞いと日当たり管理の施工実務

小手村 凪子小手村 凪子

そとん壁の仕上げパターンに詳しくなりたい。

稲熊サトシ稲熊サトシ

そとん壁は防水性もあるよ、メーカーは2層構造の効果だと言っているね、細かい粒子の下地と大きな粒子仕上げという構造だから、下地に浸水せず雨水が下に流れていくと言われている。

小手村 凪子小手村 凪子

そとん壁ではどんな仕上げが多いの?

稲熊サトシ稲熊サトシ

かき落とし」と「スチロール鏝 仕上げ」が多いかな。

小手村 凪子小手村 凪子

工事を依頼する際にはどんなポイントを気を付けたら良いの?

稲熊サトシ稲熊サトシ

雨仕舞いというけれど、掃き出し窓の下とかはどうしても割れる、上から伏せるメッシュを2重にしたりもするけれど、できれば板金とか他の素材を間に入れた方が良い。

小手村 凪子小手村 凪子

他にはどんな工夫をしているの?

稲熊サトシ稲熊サトシ

下塗りの段階で コーキング して、上塗り でもコーキングする。

小手村 凪子小手村 凪子

開口部が肝心ね。

稲熊サトシ稲熊サトシ

まとめると

1.ラスの段階でフェルト防水+防水テープ
2.下塗りで隠しコーキング
3.上塗りでコーキングする

と何重にも防水する事かな。

小手村 凪子小手村 凪子

他に気を付けた方が良い事はある?

稲熊サトシ稲熊サトシ

出隅 の処理かな、コーナー定木を使っても良いとメーカーは言っているけれど、定木の色が基本は白かグレーだから、仕上げる色によって定木が透けて見えてしまう。だから僕の場合はコーナー定木を使わずになるべく通常の木の定木を使うようにしている。

小手村 凪子小手村 凪子

大変そうね。

稲熊サトシ稲熊サトシ

工程数が増える、対面で塗っていかないといけないので、とても手間が掛かるけれど綺麗に仕上がるよ。

小手村 凪子小手村 凪子

納まりの良い外壁を作るのは難しそう。

稲熊サトシ稲熊サトシ

日の当たり加減はいつも意識しているよ、日当たりで乾き具合、仕上がりが全然変わってくる。夏は乾きが早いので人数を掛けないといけない、南側で日当たりが良いと、上から塗って行って下に到達する前にもう掻き始めないといけない。反対に真冬は乾き辛いので朝一番で塗っても乾きが遅くて、掻き始めるタイミングが日没前後だったりする。

小手村 凪子小手村 凪子

スピードと予測が大切ね。

小手村 凪子小手村 凪子

稲熊さんはそとん壁は好き?

稲熊サトシ稲熊サトシ

他の材料にない質感が良いよね。機能性が話題になるけれど、実は意匠性も高いと思ってる。意匠(デザイン)については用語集で確認してみてね。

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お薦めのポイントは?

稲熊サトシ稲熊サトシ

パッと見て自然素材と分かる風合い、インパクトのある外壁ならそとん壁がおすすめだね。

小手村 凪子小手村 凪子

ありがとう、工事を依頼する場合の注意点が分かったわ。

この記事のまとめ|3層防水と季節対応が長期品質を決める

稲熊氏のインタビューから見えてきたのは、そとん壁の耐久性は「仕上げの技術」だけでなく「見えない層での防水設計」と「季節に応じた施工マネジメント」で決まるという事実です。以下の3点が特に重要なポイントとなります。

開口部は3層で守る多層防水が基本

稲熊氏が実践する防水処理は以下の3段階:

  1. ラス 段階:フェルト防水+防水テープで一次防水
  2. 下塗り段階:隠しコーキングで二次防水
  3. 上塗り段階:仕上げコーキングで三次防水

掃き出し窓下は特にクラックが出やすいため、メッシュの二重伏せ込みに加え、板金など異素材を間に入れることで応力を分散。「割れても濡らさない」設計思想が、20年後の安心につながります。

木定木の対面施工で透け問題を根本解決

市販の コーナー定木(白・グレー)は色が透けやすく、特に濃色仕上げでは輪郭が目立ちます。稲熊氏は木定木を使い、対面で塗り進める工法を採用。工程数は増えますが、定木の色透けがなく、きれいなラインが出る仕上がりが得られます。出隅の美しさにこだわる場合、この工法が有効です。

日当たりと季節で乾燥速度が変わる——人数配置と施工タイミングの調整

そとん壁の施工品質は「乾き具合」で決まります:

  • 夏季・南面:乾きが早すぎるため、人数を増やして上から下まで一気に塗り切る
  • 冬季・北面:乾きが遅く、朝塗っても掻き始めが日没前後になることも

稲熊氏は日当たりを常に意識し、面ごとに人数と施工開始時刻を調整。「塗ってから掻くまでの猶予時間」を気象条件から逆算する段取り力が、ムラのない仕上がりを生みます。

かき落とし後の清掃まで含めた現場管理

かき落とし仕上げでは、掻いた材料が大量に下に落ちます。事前にブルーシートを敷き、作業後は土嚢袋に詰めて搬出——この清掃工程まで含めた段取りが、近隣への配慮と現場品質の両立につながります。

施工依頼時のチェックポイント

そとん壁で雨仕舞いを重視する場合、以下を施工業者と確認しましょう:

  • 開口部の多層防水:フェルト+隠し+仕上げの3段階コーキングを標準化しているか
  • 掃き出し窓下の対策:メッシュ二重+板金使用など、クラック・雨水対策の具体策
  • 出隅の施工方法:木定木の対面施工など、色透け対策の工夫があるか
  • 季節・日当たりへの対応:面ごとの人数配置、施工時刻の調整計画があるか
  • 清掃・養生の徹底:かき落とし後の材料回収、近隣配慮の体制

そとん壁の二層構造が持つ防水性能を最大限に活かすには、見えない部分での多層防水と、気象条件に応じた施工マネジメントが不可欠です。「仕上げの美しさ」の裏にある「雨を制する設計」を理解し、実務経験豊富な左官のプロに依頼することで、長く安心して暮らせる外壁が実現します。

そとん壁完全ガイド

主要トピック「そとん壁の外壁 完全ガイド」

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Author:稲熊サトシ

株式会社イナマサ業務店 代表取締役
対応エリア:名古屋市など愛知県内全域、その他(岐阜、三重、静岡など一部)
対応できる工事:内装工事、外壁工事、漆喰珪藻土タイル洗い出し、かき落とし
お薦めのデザイン:コンクリート系, フラット系, スタッコ系
備考:毎朝6時半に職人を見送ってから現場に向かいます。休日は家族で買い物するのが楽しみです。
プロフィール
愛知県名古屋市天白区出身、丑(うし)年、おひつじ座
【好きなもの】手羽先、ビール、モルタル仕事、ドライブ、釣り、温泉、DIY
【苦手なもの】納豆、スポーツ、SNS、初対面なのに馴れ馴れしい人、コミニケーションの取れない人
【マイブーム】ルアーフィシング

052-832-7679
愛知県名古屋市天白区海老山町1105

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