
珪藻土が日本の気候に最適な理由|左官のプロが実践する調湿性能を最大化する施工テクニック
なぜ左官のプロは「珪藻土」を選ぶのか
リビングの塗り壁として、漆喰と珪藻土のどちらを選ぶべきか。左官のプロである稲熊氏の会社では、施工の6〜7割が珪藻土だと言います。「自分もリビングは珪藻土派」と語る稲熊氏。その理由は、日本特有のじめじめした気候において、エアコンに頼らず快適に過ごせる調湿性能の高さにありました。さらに、珪藻土には「無添加」という選択肢があり、性能を最大化できる可能性も秘めています。本記事では、稲熊氏へのインタビューを通じて、珪藻土が持つ機能性の真価と、調湿性能を最大限に引き出す施工テクニックを解説します。

主要トピック「漆喰 vs 珪藻土 徹底比較リビングの塗り壁 完全ガイド」
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稲熊氏が語る珪藻土選びのポイント|インタビューの前に知っておきたい基礎知識
稲熊氏は豊富な施工経験を持つ左官のプロで、特に珪藻土の施工に関しては深い知見を持っています。会社全体の施工実績として珪藻土が6〜7割を占めるという数字は、その信頼性と需要の高さを物語っています。
今回のインタビューで特に注目すべきは、珪藻土の「調湿性能」に対する稲熊氏の深い理解です。単に「湿気を吸う」という表面的な知識ではなく、天井まで塗ると加湿器の効きが悪くなるという具体的な弊害や、柄をつけることで空気接触面が増えて性能が向上するという実践的なテクニックまで語られています。
また、一般的な樹脂入り珪藻土と無添加珪藻土の違いについても詳しく説明されており、「性能を取るか、扱いやすさを取るか」という選択の基準が明確に示されています。特に無添加珪藻土の特性(水をかけると柔らかくなる、割れやすい)についての率直な説明は、メリット・デメリットを正直に伝える姿勢の表れです。
さらに、エコカラットとの使い分けについても、価格差(珪藻土5,000円/㎡に対しエコカラット15,000円/㎡)を具体的に示しながら、適材適所の提案がなされています。稲熊氏が推奨するのはフジワラ化学の「シルタッチ」で、作業性、性能、色のバリエーション、不具合の少なさという総合力の高さが評価されています。

【インタビュー】左官のプロ・稲熊氏に聞く「珪藻土の調湿性能と施工テクニック」
リビングで塗り壁をする場合、どんな選択肢がありますか?
へえ、そんなに珪藻土が多いんですね。リビングには珪藻土がいいんですか?
そうですね。リビングは一般的に、自分もリビングはちょっと珪藻土という派なんですけど、なるべくエアコンをつければ別にそんなに湿度とかそういうことってあまり気にはならないと思うんですけど、なるべく使わず快適にいられるってなると、やっぱり珪藻土がいいのかなとは思いますね。
珪藻土って湿気に強いとか聞いたことあるんですけど、日本の気候に合うんですか?
なるほど。以前、素敵な喫茶店で珪藻土の壁を見たことがあるんですが、店舗の施工はされたことがあるんですか?
そうですね。喫茶店の全面改修で壁を珪藻土で仕上げさせてもらいましたけど、ただもう日数がなく夜間で、夜の作業だけで仕上げましたけど。
夜だけの作業なんて大変でしたね。ところで、塗り壁って天井にも塗れるんですか?珪藻土を天井に塗るのはどうなんでしょう?
建築屋さんによっては壁だけで天井は塗らないというところが多いですね。理由は調湿性能が良すぎるんで、冬場の加湿器の効きがかなり悪くなるんですよね。天井まですると。なので結局加湿もしすぎてもダメじゃないですか。かといって乾燥してもいけないんで、程々なところというのはやっぱり性能を上げすぎちゃってもダメだと思うんですよね。
そうなんですね、壁だけのほうがいいんですね。珪藻土にもいろいろ種類があるって聞いたんですけど、無添加の珪藻土ってどうなんですか?
まず基本一般に出ている珪藻土、特に大手メーカーさんだと少なからず樹脂が混入されてるんですよね。それによって割れを抑えたり色ムラを抑えたりということをしてるんですよね。なので一般的な職人さんが塗ってもそんなに不具合が出ないというかクレームにならない。ただ性能自体はやっぱり落ちるんですよね。樹脂が入ってる分湿気を吸いにくいというデメリットもあって。ただ一部のメーカーさんで無添加で樹脂を一切混入せずに作ってる珪藻土というのもあるんですよ。
無添加だとどう違うんですか?
塗って仕上げてから固まってはいるんですけど、水をかけると土壁みたいにちょっと柔らかくなるんですよね。そういうデメリットと割れが出やすい。樹脂とかが入ってないんで クラック とかが出やすいんですよ。ただその代わり性能はすごい良いんですよ。そういうメリットとデメリットがやっぱり珪藻土はあるんで、どこを選択するかによってもやっぱり違ってくると思うんですよね。
割れが気になる場合は、無添加じゃない方がいいってことですか?
そうですね。神経質な方には樹脂入りの方をお勧めしますね。
おすすめのメーカーや商品ってありますか?
一般的にうちが一番勧めるのはやっぱり フジワラ化学 の シルタッチ ですかね。作業性もよく塗り厚もそこそこ厚みをつけれるんで性能もそんな悪いことはないですし。色も28色くらいあって、あとから不具合も出にくいです。性能を重視するなら、無添加の珪藻土という選択肢もありますね。
これから珪藻土を検討する人へ、何かアドバイスはありますか?
そうですね。珪藻土だと色んな柄をつけれるんで、漆喰よりも砂が入ってない分、かなりの幅の柄というのは付けられるので、どこかに好みの柄というのはあると思うんですよね。逆に柄をつけた方が調湿性能は上がりますから、空気に触れる部分が増えるんで、ぜひ柄をつけてやってもらえるといいと思います。
模様を付けた方が性能も上がるんですね。お好みの模様を探すといいってことですね。
ちなみに、ペットを室内で飼っている場合も珪藻土はおすすめですか?
おすすめですけど腰板を張った方がいいですよね、下は。簡単に傷がついちゃうんで。なんでちょこっとでも腰板が張ってあれば、ぜひおすすめだと思いますね。やっぱり消臭効果もありますね。
最近エコカラットってよく聞くんですけど、珪藻土とどう違うんですか?どっちがいいんでしょう?
エコカラットというのはそもそも調湿性能もあって消臭効果も高いんですよ。それこそシルタッチと比べると、かなりエコカラットは性能はいいんですよ。調湿も消臭も。ただし高いんですよね、値段が。それこそ珪藻土がたとえば平米5000円だとすると、エコカラットが1万5000円とか、2、3倍するんで、そのぐらいの差があるんですよね。なのでエコカラットというのは基本ワンポイントというのが多いんですよ。もしくは一面。そこまで全面というのは使えないです。なんでここだけが臭うとか、ここだけ湿気が多いという場合にはエコカラットはすごく良いと思います。ただこの部屋という限定しちゃうと、全体に珪藻土を塗った方が多分その居住空間というのは良くなると思います。そういう選択をしてもらった方がいいかと思います。なんで下駄箱とか、ああいう周りというのはエコカラット多いんですよね、採用が。靴の匂いがというのが多いんで。なんでそういう使い方をしていった方がいいのかなと思いますね。
わかりました。リビングだと結構エコカラットを入れようかなみたいな方もいると思うんですけども、それで多分珪藻土を入れる場合とエコカラットを入れる場合とメリットデメリットあると思うんですけど、どういう方、何を目的に使い分けたらいいですか?
エコカラットというのはそもそも調湿性能もあって消臭効果も高いんですよ。それこそシルタッチと比べると、かなりエコカラットは性能はいいんですよ。調湿も消臭も。ただし高いんですよね、値段が。
価格が高い。コストパフォーマンスを考えるとリビングは珪藻土が良さそうですね。ありがとうございました。
プロの視点を深掘り|珪藻土の調湿性能を最大化する方法
日本の気候に珪藻土が最適な科学的理由
稲熊氏が「リビングは珪藻土派」と語る背景には、日本特有の気候条件があります。日本は四季があり、特に梅雨時期や夏場の湿度の高さは、住環境に大きな影響を与えます。
珪藻土の調湿性能が高い理由は、その多孔質構造にあります。珪藻土は植物プランクトンの化石が堆積してできた自然素材で、顕微鏡で見ると無数の微細な穴が開いています。この穴が湿度が高いときは湿気を吸収し、乾燥しているときは放出するという自然な調湿機能を果たすのです。
これにより、結露の発生を抑え、カビやダニの繁殖を防ぐ効果があります。じめじめした日本の気候において、これらは深刻な住環境の問題です。珪藻土を壁に使用することで、エアコンに頼らずとも快適な室内環境を維持しやすくなります。
稲熊氏の「なるべくエアコンを使わず快適にいられる」という表現は、省エネルギーの観点からも重要です。冷暖房費を抑えながら、自然な快適さを得られることは、長期的に見れば大きなメリットと言えるでしょう。
無添加vs樹脂入り|性能と扱いやすさのトレードオフ
稲熊氏のインタビューで最も重要なポイントの一つが、「無添加珪藻土」と「樹脂入り珪藻土」の違いです。これは一般のユーザーにはあまり知られていない、プロならではの知見です。
市場に出回っている珪藻土、特に大手メーカーの製品には、少なからず樹脂が混入されています。この樹脂の役割は、割れを抑えたり色ムラを防いだりすることです。つまり、「一般的な職人が塗っても不具合が出ない」ように調整されているのです。
しかし、樹脂が入ることで調湿性能は低下します。樹脂が多孔質構造の穴を塞いでしまい、湿気を吸いにくくなるためです。一方、無添加の珪藻土は樹脂を一切使用していないため、調湿性能は非常に高くなります。
ただし、デメリットもあります。塗って固まった後も、水をかけると土壁のように柔らかくなること、そして割れ(クラック)が出やすいことです。稲熊氏は「神経質な方には樹脂入りをおすすめする」と語っており、性能を最優先するか、安定した仕上がりを求めるかという選択基準を明確に示しています。
天井に塗ってはいけない理由|加湿器への影響
稲熊氏の指摘で特に興味深いのが、「天井には塗らない方が良い」という提案です。これは調湿性能が高すぎることによる弊害を説明しています。
壁だけでなく天井まで珪藻土を塗ると、冬場の加湿器の効きがかなり悪くなります。珪藻土が空気中の湿気を吸収してしまうため、室内の湿度が上がりにくくなるのです。加湿しすぎも問題ですが、乾燥しすぎるのも健康に良くありません。
「程々なところというのはやっぱり性能を上げすぎちゃってもダメ」という稲熊氏の言葉は、バランスの重要性を示しています。調湿性能は高ければ高いほど良いというわけではなく、適度なレベルが最適なのです。
実際、多くの建築業者が壁のみで天井は塗らないという選択をしている理由がここにあります。壁だけでも十分な調湿効果が得られ、かつ加湿器などの設備とのバランスも取れるため、これが最適解と言えるでしょう。
柄付けで調湿性能が向上する理由
稲熊氏が提案する、珪藻土の性能を最大化するテクニックが「柄付け」です。「柄をつけた方が調湿性能は上がる」という指摘は、科学的にも理にかなっています。
柄をつけることで表面に凹凸が生まれ、空気に触れる面積が増加します。調湿性能や消臭効果は、材料が空気と接触する表面積に比例するため、平滑な仕上げよりも柄をつけた方が性能が向上するのです。
珪藻土は漆喰と比べて砂が入っていない分、様々な柄をつけやすいという特徴があります。ラフ仕上げ、櫛目仕上げ、コテ抜き仕上げ など、好みの柄を選ぶことで、意匠(デザイン) と機能性の両方を高めることができます。
「どこかに好みの柄というのはあると思う」という稲熊氏の言葉は、機能性だけでなく、お客様の好みも大切にする姿勢の表れです。美しさと性能を両立できるのが、珪藻土の大きな魅力と言えるでしょう。
エコカラットとの賢い使い分け戦略
稲熊氏は、エコカラットと珪藻土の使い分けについても明確な指針を示しています。エコカラットは調湿性能も消臭効果も珪藻土より優れており、特にシルタッチと比べてもかなり性能が高いと認めています。
しかし、価格が大きな問題です。珪藻土が平米5,000円程度であるのに対し、エコカラットは平米15,000円と、2〜3倍の費用がかかります。このため、エコカラットは基本的にワンポイントか一面のみの使用が一般的です。
稲熊氏の提案は「ピンポイントで使う」というものです。下駄箱周りなど靴の匂いが気になる場所、あるいは特定の部分だけ湿気が多い場所には、エコカラットが非常に効果的です。一方、リビング全体の居住空間を良くしたいのであれば、全面に珪藻土を塗る方が効果的でコストパフォーマンスも優れています。
この「エコカラットはピンポイント、珪藻土は面で使う」という使い分けは、限られた予算の中で最大限の効果を得るための、実践的で賢い戦略と言えるでしょう。ペットを飼っている家庭では、腰板と珪藻土を組み合わせることで、傷を防ぎつつ消臭効果も得られるという具体的な提案も参考になります。

主要トピック「漆喰 vs 珪藻土 徹底比較リビングの塗り壁 完全ガイド」
こちらの関連記事では、総合的に「リビングの塗り壁」について解説しています。この記事の後に是非ご一読下さい。
珪藻土の施工を検討中の方へ
稲熊氏のインタビューから学べるのは、珪藻土が持つ調湿性能の高さと、それを最大限に活かすための施工テクニックです。日本の気候に最適な珪藻土を、無添加か樹脂入りか、柄はどうするか、天井まで塗るべきかなど、プロの視点で選択できます。珪藻土施工を検討中の方は、こうした知見を持つ左官のプロに相談することをおすすめします。
編集後記|性能へのこだわりに学ぶこと
稲熊氏の話を聞いて印象的だったのは、調湿性能という目に見えない機能に対する深い理解と、それを最大化するための具体的な方法論でした。天井まで塗ると加湿器の効きが悪くなるという指摘は、やみくもに「性能が高ければ良い」というわけではなく、バランスが大切だという教えです。柄をつけることで性能が上がるという科学的な視点も、機能とデザインは対立するものではなく、両立できるという希望を与えてくれます。


