
古い聚楽壁の上に新しい聚楽壁を塗ってはいけない理由|下地を引っ張り上げる現象とは【左官のプロが解説】
「古い聚楽壁の上から新しい聚楽壁を塗れば、費用が抑えられるのでは?」そう考える方は少なくありません。しかし、左官のプロはこの方法を強く推奨しません。なぜなら、新旧の聚楽壁の強度差により、新しく塗った壁が古い壁ごと「引っ張り上げて」しまい、剥がれてくるリスクがあるからです。本記事では、左官のプロ・田口氏へのインタビューをもとに、古い聚楽壁の上に新しい聚楽壁を塗ってはいけない理由を徹底解説。40年前の聚楽壁との強度差、剥離が起こるメカニズム、昔は何度も塗り重ねていた文化的背景、そして正しい塗り替え方法まで、現場の生の声をお届けします

主要トピック「聚楽壁とは何か 完全ガイド」
こちらの関連記事では、総合的に「聚楽壁」について解説しています。この記事の後に是非ご一読下さい。
- 古い聚楽壁の塗り替えで費用を抑えるため、剥がさずに上から塗ろうと考えている方
- なぜ古い聚楽壁を剥がす必要があるのか、技術的な理由を知りたい方
- 聚楽壁の塗り替えで失敗したくない方

40年前の聚楽壁と現代の聚楽壁、何が違うのか?
聚楽壁の塗り替えで最も重要なのは、「古い聚楽壁」と「現代の聚楽壁」では製品の性能が根本的に異なるという事実です。この違いを理解することが、正しい塗り替え方法を選ぶ第一歩となります。
昔の聚楽壁にはエマルジョン系ボンドが入っていなかった
約40年以上前に施工された聚楽壁は、現代の製品とは接着剤の配合が大きく異なります。
昔の聚楽壁の特徴:
- エマルジョン系ボンドなどの強力な接着剤が配合されていない
- 紙や土など、主に自然素材で構成
- 表面が柔らかく、脆弱
- 経年劣化でボロボロと崩れやすい
- 触ると粉が手につく
この時代の聚楽壁は、自然素材の風合いを重視した製品でしたが、その反面、接着力が弱く耐久性に課題がありました。10年も経たないうちに表面がボロボロと落ちてくることも珍しくありませんでした。
現代の聚楽壁は接着剤で強度が向上
一方、現代の聚楽壁製品は、技術の進歩により大幅に性能が向上しています。
現代の聚楽壁の特徴:
- エマルジョン系ボンド(樹脂系接着剤)を配合
- 表面強度が大幅にアップ
- 簡単にはボロボロ落ちない
- 耐久性が向上(15年程度持つ)
- 乾燥時の収縮力も強い
四国化成のジュラックスCやフジワラ化学の快適土壁など、市場に出回っている既調合の聚楽壁製品は、すべてこのタイプです。接着剤の配合により、昔の製品とは比較にならないほど強固に固まります。
この強度差が問題を引き起こす
問題は、この新旧の強度差にあります。
強度のアンバランス:
- 古い聚楽壁=接着剤が弱い=柔らかく脆い
- 新しい聚楽壁=接着剤が強い=硬く強固
この強度差があるまま、古い壁の上に新しい壁を塗ると、新しい壁の強い収縮力が、古い壁の弱い接着力を上回ってしまいます。その結果、壁全体が剥がれてくるという現象が起こるのです。
同じ「聚楽壁」という名前でも、時代によって製品のスペックが大きく異なることを理解することが重要です。
「下地を引っ張り上げる」現象とは?剥離のメカニズム
左官のプロが「下地を引っ張り上げる」「壁を持ち上げる」と表現する現象は、具体的にどのようなメカニズムで起こるのでしょうか。
新しい聚楽壁が乾燥時に収縮する
塗り壁材は、乾燥する過程で必ず収縮します。これはどんな壁材でも起こる自然な現象です。
乾燥と収縮のメカニズム:
- 塗った直後は水分を含んで柔らかい
- 時間とともに水分が蒸発
- 水分が抜けることで材料が縮む
- 現代の聚楽壁は接着剤が強いため、収縮力も強力
この収縮力自体は問題ではありません。問題は、その収縮力が古い壁にかかることです。
古い聚楽壁が収縮力に耐えられない
新しく塗った聚楽壁が乾燥して収縮すると、その力が古い聚楽壁にかかります。
剥離が起こる流れ:
- 新しい聚楽壁が乾燥して収縮し始める
- 収縮力が古い聚楽壁を引っ張る
- 古い聚楽壁の接着力が弱いため耐えられない
- 古い聚楽壁ごと下地から剥がれてくる
- 新しく塗った壁も一緒にめくれる
これが、左官職人が「下地を引っ張り上げる」「壁を持ち上げる」と表現する現象です。新しい壁が、古い壁を道連れに剥がれてしまうのです。
縁から剥がれてくる典型的なパターン
この剥離現象は、多くの場合、壁の縁から始まります。
縁から剥がれる理由:
- 壁の端は構造的に負荷がかかりやすい
- 柱や鴨居との接続部分が弱点
- 収縮力が集中しやすい
最初は数センチ程度の小さな剥がれでも、放置すると徐々に範囲が広がります。数ヶ月後、あるいは1〜2年後に大きく剥がれてくることもあり、施工直後は問題なく見えても、時間が経ってからトラブルが顕在化するケースも多いのです。
せっかく費用をかけて塗り替えても、こうなってしまっては元も子もありません。だからこそ、左官のプロは「古い聚楽壁は剥がしてから塗る」ことを強く推奨するのです。
左官のプロ・田口氏に聞く|新旧混在のリスクと正しい塗り替え方法
ここからは、実際に多くの聚楽壁塗り替えを手がけてきた左官のプロ・田口氏へのインタビューをご紹介します。新旧混在のリスク、昔と今の違い、そして正しい塗り替え方法について、現場の生の声を語っていただきました。
聚楽壁ってそもそもどんなもののことを言うのでしょうか。
私も、いわゆる本チャンっていうのは、聚楽の聚楽土っていうのをこねて、昔からある伝統的な左官工法なんですけど、それぐらいのことしか知らないし触ったこともないんですが、私が一般的に聚楽壁っていうと、メーカーで作られた 既調合 の聚楽と言われる壁の仕上げ、内装の仕上げっていうのが聚楽壁という認識ですね。
いろんなメーカーが作っているんですか。
うちの聚楽壁も古いんですけど、塗り替えるときに気をつけることはありますか。
聚楽の塗り替え工事っていうのは結構にいただくんですが、もともと古い建物、年代で言うと40年ぐらい前になるのかな。それぐらいの時期の聚楽壁は、今の既調合の聚楽壁がエマルジョン系のボンドで固めるのに対して、昔は多分それが入ってなくて、表面自体が柔らかい素材、紙だとか土だとかで作っているものですから、結構ポロポロポロポロ取れてきたり、そういった現象が起こることがあって、昔の強度のあんまりない聚楽壁に、最近の接着剤が入っている聚楽壁っていうのを塗ると、どうしても表面の新しく塗った方が強度が高いので引っ張っちゃって、壁を持ち上げちゃうっていうのが結構あって、古くて脆くなっている、脆弱になっている壁はきれいに落として、その上にまた中塗り、上塗りっていう方法でお勧めしています。
引っ張っちゃうっていうのはどういうことですか。
持ち上げちゃうんですね、 下地 を。もともと古いやつの上にそのまま塗っちゃうと。昔は、要は強度の出てない聚楽は結構何度となく塗り替えっていうのを昔してたみたいで、模様替え。いわゆる、例えば冠婚葬祭みたいな結婚式があるので、みんな家でそういうことをしましたじゃないですか。例えば子供が嫁に出るみたいなので、人が出入りするみたいなのを塗って、古い壁の上にまた新しい聚楽を塗って模様替えする。今のクロスの貼り替えみたいな。そんなイメージ。古いところは何度となく、これ何回も塗ってあるねっていうのは昔は見かけましたね。昔は本当にごく一般的なものでしたけど、それで何回も塗り替えられたけど、今のものだと引っ張っちゃうというのは剥がれてきちゃうってことですね。
なるほど。
だから今のやつの上に、今のやつって表現ちょっとおかしいですけど、最近のそのエマルジョン系ボンドが入ってるやつの上にまたボンドが入ってるやつっていうのは全然OKなんですよ。古いやつの上にボンドが入ったものを塗るとめくれてきちゃう。
なるほど。
だからその時代によって、強度が増してきたっていうタイミングがあって、それが正確には、例えば四国化成は昔はこうだったっていうのはちょっとわかんないんですけど、 塗り替え とかで現地調査をするとやっぱりこの脆いっていうのはわかるので、この上に塗るのは非常に難しいっていうか、工法としてはないことはないんですよ。要は例えば浸透性 プライマー みたいなの塗って 下地 を固めちゃってからやるみたいなやり方がないわけではないんですけど、それもちょっと怖いので、なるべく古い壁はめくって、新しいボンドが入った最近のやつを使うっていうのをしてます。
古いか新しいか、どうやって見分けたらいいんですか。
目視と手で触るっていうことですね。あと爪なんかでガリガリってやってもいいですし。古くて脆い聚楽壁っていうのは、例えば靴とか足とかが当たるような壁の下の方が擦れてたりするんで、一部下地が見えてたりするっていうことがあるものですから、そういうところで判断していくっていうことですね。
自分でやるのは難しそうなので、プロに頼むとどれくらいかかりますか。
平米5000円ぐらいから。下地をめくって下塗りをして上塗りをかけるっていうと、最低5000円ぐらいからという形になります。6畳1間だと18平米から20平米ぐらいなので、1部屋塗り替えて10万円ぐらいからという感じですね。下地の状況もあるので10万円からということですね。
おすすめの商品はありますか。
一般的なのはやはり四国化成の ジュラックス (ジュラックスC)。色もいろいろ揃ってるので、それがいいんじゃなかろうか。その性能的なことがどうのこうのか、塗りやすさがどうのこうのかっていうのは、あんまり聚楽壁では言われなかったりしますけども、このメーカーのやつが使いやすいとか、あんまりなさそうな気がしますね。ジュラックスCがいいのは、色が豊富なのと、四国化成という大手メーカーさんの実績のある商品だからということですね。間違いないところで。
他にもありますか。
これは本当に後発なんですけど、先ほど申し上げたフジワラ化学の快適土壁。これは本当に、以前、京壁じゃなくて、一般的にすごく出回ってた商品、ちょっとごめんなさい、度忘れしちゃったんですけど、京じゅらくだったかな。そんな名前のやつが、二大巨頭じゃないですけど、ジュラックスCかそれみたいなのがあったんですけど、そいつの色、かなりの数が出てたものですから、それに真似したというか、たぶん権利を買ったか何かあるんでしょうね。それでフジワラ化学の快適土壁っていうのはできたって私は聞いてますけど。快適土壁。これが前のよく出てた商品、京壁だったかな。もともとその色に合わせて、その色に合わせて出したのが快適土壁だっていうふうに聞いてますね。
聚楽壁と砂壁とか土壁って何が違うんですか。
我々が言う、いわゆる聚楽壁っていうのは、表面が石目調でザラザラするようなものを聚楽というふうに我々は言っていて、土壁 と何が違うかというと、いわゆる土壁っていうのは、商品としては何にあたるのかな。ちょっとピンとこないところもあります。聚楽壁も土壁の一種類だっていうふうに解釈してもいいかもしれませんね。塗り壁の一般的な。難易度で言ったら、我々施工業者としては聚楽壁は割に難易度が易しい。結局、木粉みたいのが入っているので、塗った跡はちょっとここで気になるんだけど、乾くと割にふわっと。片押さえ、もともと 漆喰 みたく何度も何度も押さえるっていう商品じゃないので、ある程度配っておいて頭を撫でれば、あとは水が引くとふわっと仕上がるというか。コテムラが消えやすい。なので、難易度としては易しい方ですね。
分かりました、ありがとうございます。
昔は何度も塗り重ねていた?冠婚葬祭と聚楽壁の文化
田口氏のインタビューから、興味深い文化的背景が明らかになりました。昔は聚楽壁を何度も塗り重ねていたという事実です。
昔の聚楽壁は模様替え感覚で塗り替えていた
田口氏によれば、かつては冠婚葬祭のたびに聚楽壁を塗り替えるという習慣がありました。
「昔は、要は強度の出てない聚楽は結構何度となく塗り替えっていうのを昔してたみたいで、模様替え。いわゆる、例えば冠婚葬祭みたいな結婚式があるので、みんな家でそういうことをしましたじゃないですか。例えば子供が嫁に出るみたいなので、人が出入りするみたいなのを塗って、古い壁の上にまた新しい聚楽を塗って模様替えする。今のクロスの貼り替えみたいな。そんなイメージ」
昔の塗り替え文化:
- 娘が嫁に出る際に壁を新しく
- 結婚式などで人を招く前に
- 家を綺麗にする手段として
- クロスの貼り替え感覚
- 何層にも重なった家も珍しくない
田口氏は「古いところは何度となく、これ何回も塗ってあるねっていうのは昔は見かけましたね」と振り返ります。実際、古い家を解体すると、聚楽壁が5層も6層も重なっていることがあるそうです。
なぜ昔は塗り重ねられたのか
では、なぜ昔は塗り重ねることができたのでしょうか?答えは、接着剤が弱かったからです。
昔は塗り重ねが可能だった理由:
- 古い聚楽壁も新しい聚楽壁も、どちらも接着剤が弱い
- 強度差がほとんどない
- 新しい壁の収縮力も弱い
- 古い壁を引っ張り上げるほどの力がない
つまり、「弱い壁の上に弱い壁を塗る」という状態だったため、剥離が起こりにくかったのです。新旧の強度が似通っていれば、収縮力のバランスが取れるため、問題は起こりません。
現代では塗り重ねが通用しない理由
しかし、現代ではこの方法が通用しません。田口氏の言葉を借りれば、**「今のやつの上に今のやつっていうのは全然OKなんですよ。古いやつの上にボンドが入ったものを塗るとめくれてきちゃう」**のです。
塗り重ねの可否:
- ○ 現代製品の上に現代製品を塗る → OK
- × 古い製品の上に現代製品を塗る → NG
- ○ 古い製品の上に古い製品を塗る → OK(昔はこれだった)
「だからその時代によって、強度が増してきたっていうタイミングがあって」という田口氏の指摘通り、エマルジョン系ボンドが一般的になった時期を境に、聚楽壁の性質は大きく変わりました。
正確にいつから強度が上がったのかは、メーカーや製品によって異なりますが、おおよそ40年以上前の聚楽壁は要注意と考えておくべきでしょう。
正しい聚楽壁の塗り替え方法|剥がしてから塗るのが鉄則
では、古い聚楽壁を正しく塗り替えるには、どうすればよいのでしょうか。田口氏が推奨する方法を見ていきましょう。
古い聚楽壁を完全に剥がす
田口氏が最も強調するのは、古くて脆くなっている壁はきれいに落とすことです。
「古くて脆くなっている、脆弱になっている壁はきれいに落として、その上にまた中塗り、上塗りっていう方法でお勧めしています」
剥がすべき理由:
- 脆弱な層を除去することで下地が安定
- 新旧の強度差問題を根本から解決
- 長持ちする塗り替えが実現
- 初期投資は高いが、長期的にはコスト削減
剥がす際の判断基準として、田口氏は「目視と手で触るっていうことですね。あと爪なんかでガリガリってやってもいいですし」とアドバイスしています。
脆弱性のチェック方法:
- 目視:壁の下部が擦れて下地が見えている
- 手触り:触ると柔らかく、粉が手につく
- 爪:ガリガリと引っ掻くと簡単に削れる
- 足元:靴や足が当たる部分が削れている
これらの症状が見られる場合、その聚楽壁は脆弱になっており、剥がすべきです。
中塗り・上塗りという正しい工程
古い聚楽壁を剥がした後は、適切な工程で施工します。
正しい施工手順:
- 古い聚楽壁を剥がす
- 剥がし剤を使用
- 完全に除去する
- 下地の状態確認
- 傷がないかチェック
- 必要に応じて補修
- 中塗り(下塗り)
- 下地と仕上げ材の接着を良くする
- しっかり乾燥させる
- 上塗り(仕上げ)
- 聚楽壁の仕上げ材を塗る
- 美しく仕上げる
田口氏は「その上にまた中塗り、上塗りっていう方法でお勧めしています」と、この工程の重要性を強調しています。
浸透性プライマーという選択肢とそのリスク
ただし、古い壁を剥がさない方法が全くないわけではありません。田口氏は浸透性プライマーという補助的な工法についても言及しています。
「工法としてはないことはないんですよ。要は例えば浸透性プライマーみたいなの塗って下地を固めちゃってからやるみたいなやり方がないわけではないんですけど」
浸透性プライマーの役割:
- 古い壁の表面に浸透
- 内部から固める
- 接着力を高める
しかし、田口氏はこの方法に対して慎重です。「それもちょっと怖いので、なるべく古い壁はめくって、新しいボンドが入った最近のやつを使うっていうのをしてます」
プライマー工法のリスク:
- 完全に固まる保証がない
- 内部まで浸透しきらない可能性
- 後で剥がれるリスクが残る
- プロでも「ちょっと怖い」と感じる不確実性
確実性を求めるなら、やはり剥がしてから塗るのが鉄則です。初期費用は高くなりますが、長期的に見れば最もコストパフォーマンスが良い方法と言えます。
聚楽壁塗り替えの費用相場と見積もりのポイント
田口氏が示した費用相場と、見積もりを取る際の注意点を整理しましょう。
平米5000円から、6畳で10万円からという相場
田口氏によれば、聚楽壁の塗り替え費用は**「平米5000円ぐらいから」**とのことです。
「下地をめくって下塗りをして上塗りをかけるっていうと、最低5000円ぐらいからという形になります。6畳1間だと18平米から20平米ぐらいなので、1部屋塗り替えて10万円ぐらいからという感じですね」
費用相場:
- 平米単価:5,000円〜(剥がし・下塗り・上塗り込み)
- 6畳間(18〜20㎡):10万円〜
- 下地の状態で変動
田口氏が「下地の状況もあるので10万円からということですね」と付け加えているように、「〜から」という表現は最低価格を意味します。下地の状態が悪ければ、追加の補修作業が必要になり、費用は上がります。
古い壁を剥がさない見積もりに注意
見積もりを取る際、注意すべきは安すぎる見積もりです。
要注意ポイント:
- 剥がし工程が含まれているか
- 「上から塗るだけ」の見積もりではないか
- 安い理由が明確か
剥がし作業を省略すれば、当然費用は安くなります。しかし、田口氏が詳しく説明したように、古い壁の上に新しい壁を塗ることは、後で剥がれてくるリスクが高い方法です。
安い見積もりの落とし穴:
- 初期費用は安い
- 数ヶ月〜数年後に剥がれる
- 結局、塗り直しが必要になる
- トータルで高くつく
複数の業者から見積もりを取り、なぜその金額なのか、どの工程が含まれているのかを明確に確認しましょう。
現地調査で脆弱性を判断してもらう
田口氏は「塗り替えとかで現地調査をするとやっぱりこの脆いっていうのはわかる」と述べています。
現地調査の重要性:
- 目視と手触りでプロが診断
- 壁の築年数を確認
- 脆弱性の程度を判断
- 最適な工法を提案
電話やメールだけで見積もりを出す業者ではなく、必ず現地に来て壁の状態を確認してくれる業者を選びましょう。田口氏のような経験豊富な左官職人であれば、触っただけで「これは古いタイプだな」「これは剥がさないとダメだな」と判断できます。
適切な現地調査があってこそ、正確な見積もりと、長持ちする施工が実現するのです。
まとめ|古い聚楽壁は剥がしてから塗るのが長持ちの秘訣
田口氏のインタビューを通じて、古い聚楽壁の上に新しい聚楽壁を塗ってはいけない理由が明確になりました。
重要ポイントの再確認
- 40年前の聚楽壁はエマルジョン系ボンドが入っておらず、現代製品と強度が大きく異なる
- 新しい聚楽壁の強い収縮力が、古い壁を「引っ張り上げて」剥がしてしまう
- 昔は新旧ともに接着剤が弱かったため、塗り重ねが可能だったが、現代では通用しない
- 「今のやつの上に今のやつ」はOKだが、「古いやつの上に新しいやつ」はNG
- 正しい塗り替え方法は、古い壁を剥がして、中塗り・上塗りという工程を踏むこと
- 浸透性プライマーという方法もあるが、プロでも「ちょっと怖い」と感じる不確実性がある
- 費用相場は平米5,000円〜、6畳間で10万円〜(剥がし・下塗り・上塗り込み)
- 安すぎる見積もりは剥がし工程が省略されている可能性があるため注意
長持ちする塗り替えのために
田口氏が繰り返し強調していたのは、**「古くて脆くなっている、脆弱になっている壁はきれいに落として」**という原則です。
初期費用は確かに高くなります。剥がし作業の分だけ、コストも時間もかかります。しかし、この工程を省略してしまうと、数ヶ月後、数年後に壁が剥がれてきて、結局は塗り直しが必要になります。そうなれば、トータルのコストは倍以上になってしまいます。
正しい選択とは:
- 目先の費用削減ではなく、長期的な視点
- 確実性の高い工法を選ぶ
- 現地調査をしっかり行う業者に依頼
- 「剥がしてから塗る」を基本とする
田口氏のような経験豊富な左官のプロに相談し、壁の状態を正しく診断してもらった上で、適切な工法を選択することが、満足のいく塗り替えへの第一歩です。
「古い聚楽壁の上に新しい聚楽壁を塗ってはいけない」──この原則を守ることが、美しく長持ちする壁を実現する秘訣なのです。
この記事のポイント:
- 40年前の聚楽壁と現代製品では強度が全く違う
- 新しい壁が古い壁を「引っ張り上げて」剥がしてしまう
- 昔は塗り重ねが可能だったが、現代では通用しない
- 正しい塗り替えは古い壁を剥がしてから
- 平米5,000円〜、6畳間10万円〜が相場
- 安すぎる見積もりは剥がし工程省略の可能性あり

主要トピック「聚楽壁とは何か 完全ガイド」
こちらの関連記事では、総合的に「聚楽壁」について解説しています。この記事の後に是非ご一読下さい。
編集後記
長年左官の現場で働く中で、「せっかく塗り替えたのに剥がれてきた」という相談を何度も受けてきました。その多くは、費用を抑えようと古い壁の上に直接塗ってしまったケースです。気持ちは本当によく分かります。剥がす作業の分だけ費用が高くなるのは事実ですから。しかし、40年前の聚楽壁と現代の製品では強度が全く違います。「引っ張り上げる」現象は必ず起こります。初期費用を抑えて後悔するより、確実な方法で長く使える壁にする方が、結果的に満足度は高いはずです。聚楽壁の塗り替えを検討されている方は、まず左官のプロに現地調査を依頼し、壁の状態をしっかり診断してもらってください。
株式会社 田口業務店 代表取締役
経歴:昭和40年創業の2代目、前職も含めタイルと左官に携わり30年以上の経験と実績。店舗工事や土間工事にも精通している。
「良い物は長持ち」がモットーで、古民家再生など街の困り事を左官の技術を使い解決に取り組んでいる。
対応エリア:名古屋市など愛知県内全域、その他(岐阜、三重など一部)
対応できる工事:タイル工事、土間工事、外構工事、漆喰・珪藻土 など内外装工事
お薦めのデザイン:ウェーブ系, マーブル系
備考:趣味は山登りとフライフィッシング。自然に触れるのが好きで、最近は野菜作りにハマっています。
<プロフィール>
名古屋市南区出身、酉(とり)年、ふたご座
【好きなもの】寿司、米焼酎、フライフィッシング、ワカサギ釣り、サイクリング、都市伝説、料理
【嫌いなもの】真実を語らないマスコミ、背脂たっぷりのラーメン、嘘つき政治家、添加物たっぷりのコンビニ弁当、やたら甘いラクトアイス
【マイブーム】ルンバの世話
