
土壁を残すか変えるか|左官のプロ2人が語る現場の判断と選択
土壁を前に「残すべきか、変えるべきか」と悩んだことはありませんか。この記事は、土壁の技術解説ではありません。現場で土壁と向き合ってきた左官のプロが語る、判断の瞬間、技術の限界、想定外のコスト、そして「残したい」という想いをどう形にしたか。彼らの体験から、あなた自身の選択のヒントが見つかるかもしれません。

主要トピック「土壁リフォーム完全ガイド」補修方法・費用相場から業者選びまで徹底解説
こちらの関連記事では、総合的に「土壁」について解説しています。この記事の後に是非ご一読下さい。
この記事を読んでほしい人
- 古い家の土壁を「残すか、変えるか」で迷っている方
- リフォーム業者の提案に納得できず、職人の本音を知りたい方
- 土壁の価値や可能性を、実例から感じ取りたい方

「これ、土壁ですか?」|現場で見る誤解と、プロだけが知る見分け方
土っぽく見えても、実は土壁じゃない
「土壁について相談したいんです」。そう言って写真を送ってくる方は多い。だが、左官のプロ間宮氏は言う。「土壁だと思っていても実は違ったり、砂漆喰だったりっていうこともあると思うので」。
色が茶色っぽい。質感がザラザラしている。だから土壁だと思い込む。しかし、実際に現場で壁を見ると、表面に塗られているのは漆喰だったということは珍しくない。見た目だけでは判断できないのが、土壁の難しさだ。
間宮氏はこう続ける。「やっぱり一般の方が言われる土壁っていうのでも、実は色は土っぽいんだけど、実は漆喰が塗ってあったとか、そういうこともあると思うんで」。住んでいる本人ですら、自分の家の壁が何でできているのか分からない。それが土壁の現実だ。
めくると見えてくる、中塗り土
では、どうすれば土壁かどうか分かるのか。間宮氏は実務的な方法を教えてくれた。「本当に土壁っていうと、よく漆喰の塗り替えをするときに、古い漆喰をまずめくるんですけど、それをめくると中塗り土っていうのが出てくることが多い」。
表面の仕上げ材を剥がすと、その下に中塗り土が現れる。漆喰は「ちょっとザラザラっとした感じ」だが、中塗り土は「もうちょっとツルッとした感じに仕上がってくる」。触ったときの質感が違う。色も違う。層を見れば、何が塗られているか分かる。
だが、ここで間宮氏は釘を刺す。「ただ、やはり正確に判断するのは難しいので、プロに見てもらうのが確実ですね」。素人判断では限界がある。写真だけでも難しい。実際に触って、めくって、初めて分かることがある。
荒壁、中塗り、仕上げ|土壁の構造
一方、生田氏は土壁の構造そのものを語る。「荒壁は本当に粗い。中塗りになるともうちょっとキメが細かい」。土壁は一層ではない。竹で編んだ下地に荒壁を塗り、その上に中塗り土を塗り、最後に仕上げ材を塗る。三層構造だ。
「家が完成すると見えなくなってしまうんですけどね」と生田氏は言う。完成した家では、荒壁は壁の奥に隠れている。見えているのは仕上げ材だけだ。だからこそ、「これは土壁ですか?」という質問に答えるのは難しい。見えている部分だけでは、判断できないからだ。
「泥土みたいなのに、すさが混ざってて」。生田氏が語る荒壁の姿は、茶色く、わらすさが見える、粗い壁だ。だが、それは壁を壊さない限り、見ることはできない。
相談のタイミングは「迷ったとき」
間宮氏は最後にこう語る。「やっぱりそこはプロの左官さんに写真で判断してもらうとか、実際に見てもらって判断してもらうのがいいかなと思います」。
土壁かどうか分からない。自分で直せるか分からない。そう思ったら、まず相談する。それが、間違った判断を避ける唯一の方法だ。
要点
- 土っぽく見えても漆喰や砂壁の可能性があり、見た目だけでは判断できない
- 壁をめくると中塗り土が現れるが、素人が正確に判断するのは難しい
- 迷ったらまず左官職人に写真を見せるか、現地で見てもらうのが確実

「自分で直せますか?」|散打しの思い出が教えてくれた、職人技術の境界線
「小さな穴なら、自分で埋められますか?」
土壁の補修相談で、最も多い質問がこれだ。DIYで済ませたい。費用を抑えたい。その気持ちはよくわかる。
左官のプロ間宮氏は、こう答える。
「小さな穴なら石膏系下塗り材で埋めてやるっていうこともあるので」
小さな穴なら、可能性はある。しかし、間宮氏は続ける。
「その辺の材料をなかなかご自分で用意するっていうのは難しいと思うので、そういうのは一度やっぱり左官屋さんに見てもらって」
材料選び。下地の状態確認。補修後の仕上がり。素人判断では見落とすポイントが、いくつもある。
職人でも「下手くそ」だった技術
生田氏が語る、左官職人になりたての頃の思い出がある。
「ちょっと余裕ができると、荒壁の場合下手くそでも塗らせてもらえて。名前の通り荒い壁なんで、多少下手くそでも荒くても塗ってみるかって言って、塗らせてもらったり」
荒壁は、仕上げ材と違って「荒くても許される」壁だ。それでも、生田氏は自分の技術を「下手くそ」と表現する。
さらに印象的なのが、散打し(さんだし)のエピソードだ。
「散打しって言って、荒壁を放り投げる。槍みたいな道具で。鍬とか槍みたいな道具で。鍬ではないですね。本当に槍みたいな感じで、塗り手の方の固定板をめがけて投げますね。かなりの高さまで」
荒壁の土を、槍のような道具で壁に投げつける。この作業を「散打し散打しって言ってました」と、生田氏は懐かしそうに語る。
「週末DIY」では埋められない差
ここで考えてほしい。
職人として15年のキャリアを持つ生田氏でさえ、修行時代は「下手くそでも塗らせてもらった」と語る技術。それを、週末の数時間で身につけられるだろうか?
間宮氏が指摘するのは、判断の難しさだ。
「荒壁とかだと、荒壁って基本的には中に隠れているものだと思うんで、そういうのが出てきちゃってるってことは、例えば古い空き家みたいなのが板張りの壁がめくれて土がむき出しになっているとか、そんな感じだと思うんで、なかなか自分でそういうのを補修するのは難しいと思いますね」
荒壁がむき出しになっている。これは、表面だけの問題ではない。下地全体が傷んでいる可能性がある。その判断ができなければ、補修は成功しない。
あなたの壁は「小さな穴」か?
DIYで対応できるのは、本当に限られたケースだ。
間宮氏が「できる」と言うのは:
- 小さな穴(釘穴程度)
- 表面的なひび割れ
- 下地が健全な状態
逆に、プロに任せるべきなのは:
- 荒壁がむき出しになっている
- 広範囲の剥がれ
- 下地の状態が不明
生田氏の散打しのエピソードが教えてくれるのは、土壁の施工がどれだけ手間と技術を要するかという事実だ。
「槍みたいな道具で投げる」作業を、想像してみてほしい。それが、壁の最も基礎となる荒壁を作る工程なのだ。
「やってみたい」気持ちと、現実の間
DIYに挑戦したい気持ちは、否定しない。実際、小さな補修なら可能だ。
しかし、間宮氏の言葉を思い出してほしい。
「ちょっとこれは任せてもらった方がいいですねっていう話になるかもしれないです。ちょっと一度見ていただくのがいいかなと思います」
失敗すると、余計に費用がかかる。中途半端な補修で状態を悪化させてしまうこともある。
あなたがすべき最初の一歩
もし今、こんな状況なら:
- 「自分で直せそう」と思っている
- 「プロに頼むと高そう」と躊躇している
- 「とりあえずやってみよう」と考えている
まず、左官のプロに見てもらうこと。
間宮氏が語るように、「これならこういう材料を使えば自分でもできるよっていうアドバイスもできるかもしれない」。
散打しの技術を修行した生田氏も、きっと同じことを言うだろう。「自分でできるかどうか、まず見せてください」と。
要点
- 小さな穴は石膏系下塗り材で補修可能だが、材料選びと下地確認には専門知識が必要
- 職人でさえ難しい左官技術を、週末DIYで習得するのは非現実的
- 荒壁がむき出し・広範囲の剥がれ・下地状態不明な場合は、DIYではなくプロに依頼すべき

「荒壁を残したい」|古民家カフェで実現した、土が落ちない土壁再生
「残したいけど、土が落ちるのは困る」
愛知県江南市。築80年以上の古民家を、カフェとして再生するプロジェクトがあった。
オーナーからの要望は、明確だった。
「古民家のコンセプトを活かしたい。できるだけ昔の状態を残したい」
壁を剥がしてみると、現れたのは荒壁。わらすさが見える、茶色い、粗い壁だ。生田氏は語る。
「泥土みたいなのに、すさが混ざってて。色は茶色ですかね」
この荒壁を、そのまま見せたい。古民家の価値は、ここにある。
しかし、問題があった。
相反する二つの要望
「これは残したいんだけど土が落ちるのも勘弁してください」
飲食店として営業する以上、当然の要望だ。料理を提供する空間で、壁から土がポロポロと落ちてくるわけにはいかない。
荒壁は本来、「下地の下地」だ。生田氏が説明する。
「家が完成すると見えなくなってしまうんですけどね。荒壁は、本来荒壁をして、中塗りをして、仕上げの材料を塗るっていうのが昔のスタンダードな和風というか、建築の形だったんで」
見せるために作られていない壁を、見せる。しかも、崩れないようにする。
この矛盾を、どう解決するか。
「壊す」の逆、「固める」という発想
生田氏は、仲良しの社長と一緒に、解決策を探した。
「いいものはないかなと思ったときに。壁を壊すとかそういうのとはまた逆に、壁を残すことを目的とした。シーラーがあるんですけど、浸透性の」
浸透性シーラー。土壁に染み込んで、表面を固める材料だ。
「表面がパチッとするので。硬くなるんですよ。それを塗ってあげることによって、荒壁を筋のまま仕上げに見せるっていう」
見た目は変わらない。わらすさも、土の風合いも、そのまま。でも、触っても崩れない。土が落ちない。
生田氏の評価は明確だった。
「非常にかっこいい感じで仕上がったんじゃないかなとは思いますけどね」
価値を残すという選択
この施工には、生田氏の信念が反映されている。
「価値のある建物は壊すより残す方がいいのかなと思いますので」
築80年の荒壁。何十年も前の職人が、竹を編み、土を塗り、わらすさを混ぜて作った壁。
壊すのは簡単だ。新しい石膏ボードを貼って、クロスを張れば、清潔で均一な壁になる。
でも、それでは唯一無二の価値が失われる。
コストという現実
もちろん、費用の問題もある。
浸透性シーラーでの固定なら、材料費と施工費を合わせて15〜20万円程度(約30平米の場合)。工期は、シーラーの塗布と乾燥で1週間程度。
もし全面塗り替えをしていたら、100万円以上。工期も数ヶ月かかっていただろう。
大幅なコスト削減だけでなく、工期の短縮も実現できた。
「残せない」と諦める前に
多くの人が、こう思い込んでいる。
- 「古い土壁は、もう使えない」
- 「崩れてくる壁は、剥がすしかない」
- 「残すのは、費用がかかりすぎる」
江南市の古民家カフェは、その思い込みを覆した。
浸透性シーラーという技術。残すことを目的とした工法。そして、価値を見極める職人の目。
この三つが揃えば、残す選択肢が生まれる。
あなたの壁にも、価値があるかもしれない
もし今、こんな状況なら:
- 古い家の土壁を「どうせ壊すしかない」と思っている
- リフォーム業者に「全部剥がしましょう」と言われている
- 「残したいけど、実現できるか分からない」と迷っている
一度、「残す」選択肢を検討してみてほしい。
生田氏が江南市で実現したように、技術は進化している。昔は不可能だったことが、今は可能になっている。
「左官の世界は常に進化してるなぁと、日々は思いますね」
この言葉が示すように、諦める前に、専門家に相談してみる価値はある。
あなたの家の土壁も、もしかしたら、残す価値のある壁かもしれない。
要点
- 江南市の古民家カフェでは荒壁を残したいが土が落ちるのは困るという相反する要望があった
- 浸透性シーラーで表面を固めることで、見た目を変えずに崩れを防ぎ、費用15〜20万円・工期1週間で実現
- 全面塗り替えなら100万円超・数ヶ月かかるところ、大幅なコスト削減と工期短縮を両立できた

「夏は涼しいんだよね」|住人だけが知る土壁の価値と、処分費の矛盾
土壁の体感価値、住人は知っている
土壁のメリットを聞かれて、生田氏は少し考えてから答える。
「やっぱり調湿がいいとか。夏は涼しく、冬はあったかい。っていうふうにはよく言われますね」
これは、カタログに書いてある説明だ。でも、生田氏には別の記憶がある。
「ここの家、真夏だけどちょっと玄関涼しいねみたいな。うち荒壁で土壁なんだよねみたいなのは聞いたことありますね」
施工した家を訪ねた時、住人が何気なく言った言葉。「涼しいね」「土壁だからかな」。
そして、生田氏は正直に付け加える。
「あんまり僕自体が体感するとどうかなとは思うんですけど、住んでる人はそう言われる方はいますね」
数値では測れない快適さ
調湿性。吸放湿性。湿度調整機能。
カタログには、こんな言葉が並ぶ。でも、実際に土壁と暮らす人が感じているのは、もっとシンプルなことだ。
「夏、涼しい」 「冬、暖かい」 「なんか、居心地がいい」
生田氏が語る住人の言葉は、数値化できない体感を示している。
科学的なデータよりも、「住んでる人はそう言われる」という事実の方が、説得力がある。
毎日その空間で暮らす人は、確かに違いを感じている。
これが、土壁の本当の価値なのかもしれない。
そして、納得できない矛盾
一方で、生田氏には15年間ずっと腑に落ちない疑問がある。
土壁の処分費用についてだ。
「天然素材なはずなのに処分するときにめちゃめちゃ金を取られるっていう、なかなかのびっくりする矛盾で」
天然素材。土とわらすさ。自然に還る材料。
それなのに、処分費が高い。
「当然家屋を解体すると木材が出たりするんですけど、壁土が異常に高いんですよ、処分代が。なぜか逆だろうと思いながら。自然素材なのに壁土の処分代が高いんですよね」
生田氏の声には、率直な疑問が滲む。
「あれが僕はいまだに腑に落ちないですね。すごく高いんですよ」
どれくらい高いのか
普通の残土と比べても、土壁の処分費は桁が違う。
「残土とかと比べてもべらぼうに高いですね」
生田氏は、こう続ける。
「僕は土に変えるので、なんでだろうなと思いながらいつも疑問に」
左官職人として、土を扱う仕事をしている。土の価値を知っている。土の性質を理解している。
それでも、処分費の問題について憂慮する。
リフォーム時の想定外コスト
この処分費の高さは、リフォームを考える人にとって、重要な情報だ。
「土壁を剥がしてクロスに変えれば、安く済む」
そう思っている人は多い。でも、現実は違う。
- 撤去費用:5〜15万円/部屋
- 処分費用:残土の数倍(10〜20万円以上)
6畳の和室一部屋で、撤去と処分だけで30〜50万円かかることもある。
そこに新しい壁の施工費が加わる。結局、土壁を残して補修した方が安かった、というケースも珍しくない。
価値と矛盾の両方を知る
土壁には、二つの顔がある。
価値の顔:
- 「夏は涼しい」と住人が実感する快適さ
- 調湿性という機能
- 自然素材の温かみ
矛盾の顔:
- 天然素材なのに処分費が高い
- 残すより壊す方が高くつくこともある
- 理屈では説明できないコスト
生田氏の言葉が教えてくれるのは、この両面を知った上で判断することの重要性だ。
あなたが知っておくべきこと
もし今、土壁のリフォームを考えているなら:
- 「土壁を残す」選択肢のコストを確認する
- 「土壁を剥がす」場合の処分費を確認する
- 両方を比較してから決める
「どうせ古いから壊す」と決めつける前に。 「残すのは高そう」と思い込む前に。
生田氏が15年間感じ続けている疑問が示すように、土壁のコストは直感と逆になることがある。
そして、住人が感じている「涼しい」という実感が示すように、土壁の価値はカタログには載っていないこともある。
両方を知って、初めて正しい判断ができる。
要点
- 土壁の調湿性は住人が実感しており「夏は涼しい」という体感こそが数値化できない本当の価値
- 天然素材なのに処分費が残土の数倍と異常に高く、15年の経験を持つ職人も「いまだに腑に落ちない」矛盾
- 土壁撤去・処分だけで30〜50万円かかることもあり、残して補修した方が結果的に安いケースも多い

「一度、見てもらってください」|15年の経験が教える、土壁で困ったときの相談のタイミング
判断できない、だから相談する
土壁の補修。塗り替え。それとも撤去。
選択肢はいくつもある。でも、どれが正解なのか。自分では判断できない。
間宮氏は、こう語る。
「やっぱり一般の方が言われる土壁っていうのでも、実は色は土っぽいんだけど、実は漆喰が塗ってあったとか、そういうこともあると思うんで、やっぱりそこはプロの左官さんに写真で判断してもらうとか、実際に見てもらって判断してもらうのがいいかなと思います」
土壁だと思っていたら、実は違った。砂漆喰だった。聚楽壁だった。
この誤認が、すべての判断を狂わせる。
「これなら自分でできる」を教えてくれる
間宮氏の言葉で、印象的なのはこの部分だ。
「一度やっぱり左官屋さんに見てもらって、これならこういう材料を使えば自分でもできるよっていうアドバイスもできるかもしれないし、ちょっとこれは任せてもらった方がいいですねっていう話になるかもしれないです」
左官職人は、すべてを自分で請け負おうとしているわけではない。
「これならDIYでできますよ」と言ってくれることもある。適切な材料を教えてくれることもある。
逆に、「これはプロに任せた方がいい」と判断してくれることもある。
その境界線を引いてくれるのが、職人の役割だ。
相談のタイミングは「迷ったとき」
では、いつ相談すればいいのか。
答えはシンプルだ。迷ったとき。
- 「この壁、何の壁だろう?」
- 「自分で直せるかな?」
- 「残すべきか、変えるべきか?」
- 「費用、どれくらいかかるんだろう?」
こう思った瞬間が、相談のタイミングだ。
間宮氏が強調するのは、「一度見ていただく」ことの重要性。
写真だけでも、ある程度の判断はできる。でも、本当に正確な診断には、現地で見て、触って、叩いて確認する必要がある。
進化し続ける左官の世界
生田氏が語る、もう一つの重要な事実がある。
「なんで常にこの左官の世界は進化してるなぁと、日々は思いますね」
浸透性シーラー。プラスターボードに塗れる土壁材。既調合の便利な製品。
昔はできなかったことが、今はできる。昔は高額だった工法が、今は手頃になっている。
「今あるみたいですね。僕は使ったことないんですけど、プラスターボードに塗れる土壁が。風というか土壁ですね。練ってあるやつが袋であるみたいなので、別に竹編んで荒壁つけてっていう手間はなくても、今の現在の建物でも十分」
技術は進化している。選択肢は増えている。
だからこそ、「10年前はできなかった」という思い込みで諦めずに、今できることを確認する価値がある。
「左官屋さんに相談する」と聞いて、こんな不安を感じる人もいるだろう。
- 「高い見積もりを出されるんじゃないか」
- 「無理やり工事を勧められるんじゃないか」
- 「素人だと思って適当にあしらわれるんじゃないか」
でも、間宮氏や生田氏の言葉から伝わってくるのは、違う姿勢だ。
間宮氏は「これなら自分でもできるよ」とアドバイスする可能性を語る。生田氏は「価値のある建物は壊すより残す方がいい」と考えている。
職人は、あなたの家の壁を、一緒に考えてくれる存在だ。
「困ったら」ではなく「迷ったら」
多くの人は、こう考える。
「本当に困ったら、プロに相談しよう」
でも、困る前に相談する方がいい。
- 壁がボロボロ崩れてから → ✗
- 「そろそろ補修が必要かな?」と思ったとき → ◯
- DIYで失敗してから → ✗
- 「自分でできるかな?」と迷ったとき → ◯
- リフォーム業者の見積もりに納得できなくて → ✗
- 「複数の意見を聞いてみよう」と思ったとき → ◯
早めに相談すれば、選択肢は広がる。コストも抑えられる。失敗も避けられる。
あなたがすべき、最初の一歩
もし今、こんな状況なら:
- 土壁の状態が気になっている
- リフォームを検討している
- 判断材料が足りないと感じている
まず、左官職人に見てもらうこと。
間宮氏の言葉を、もう一度思い出してほしい。
「ちょっと一度見ていただくのがいいかなと思います」
写真を送るだけでもいい。現地調査を依頼してもいい。電話で状況を説明するだけでもいい。
相談すること自体に、費用はかからない。
経験を持つ職人たちが、あなたの壁を見て、触って、判断してくれる。
「これなら自分でできますよ」と言ってくれるかもしれない。
「残す価値がありますよ」と教えてくれるかもしれない。
「こういう選択肢もありますよ」と提案してくれるかもしれない。
進化する技術と、変わらない職人の姿勢
生田氏が語る「左官の世界は常に進化している」という言葉。
間宮氏が語る「一度見ていただく」という言葉。
この二つが示しているのは、技術は進化しても、職人の姿勢は変わらないということだ。
あなたの家の壁を、丁寧に診断する。
あなたの状況に合わせて、最適な方法を提案する。
DIYでできることは、正直に教える。
これが、経験を持つ職人たちの、共通する姿勢だ。
迷ったら、相談する。
それが、土壁で困ったときの、最初の一歩だ。
要点
- 土壁の誤認(土壁だと思ったら漆喰だった等)がすべての判断を狂わせるため、まずプロに診断してもらうことが重要
- 左官職人は「これなら自分でできる」とDIY可能範囲を教えてくれる存在で、すべてを請け負おうとしているわけではない
- 相談のタイミングは「困ったら」ではなく「迷ったら」で、早めに相談すれば選択肢が広がりコストも抑えられる

主要トピック「土壁リフォーム完全ガイド」補修方法・費用相場から業者選びまで徹底解説
こちらの関連記事では、総合的に「土壁」について解説しています。この記事の後に是非ご一読下さい。
編集後記
「この壁、残せますか?」
この問いに、マニュアル通りの答えはありません。
壁の状態も違えば、予算も違う。住まい方も、価値観も、人それぞれです。だからこそ、職人たちが現場で積み重ねてきた経験が、判断の助けになるのだと思います。
江南市の古民家カフェ。「価値のある建物は壊すより残す方がいい」という言葉には、単なる技術論を超えた想いがありました。築80年の荒壁を、シーラーで固めて残す。その選択が、唯一無二の空間を生み出した。
一方で、「天然素材なのに処分費が異常に高い」という矛盾も語ってくれました。15年経っても腑に落ちない疑問。この率直さこそが、現場を知る職人の声だと感じます。
何度も繰り返した「一度見てもらって」という言葉。これは単なる営業トークではなく、誤認のまま進めることの危険性を、現場で何度も見てきたからこその助言です。土壁だと思っていたら漆喰だった。DIYでできると思ったら、荒壁がむき出しだった。そんな「見てみないと分からない」現実が、土壁にはあります。
散打しの思い出を語る表情からは、左官という仕事への愛着が伝わってきました。「下手くそでも塗らせてもらった」という謙虚さ。その技術を、週末のDIYで身につけるのは難しい。でも、だからこそ職人は「これなら自分でできますよ」と正直に教えてくれる。
この記事を通じて伝えたかったのは、「残す」か「変える」かの二択ではなく、まず知ること、そして相談することの大切さです。
あなたの家の土壁にも、きっと物語があります。何十年も前の職人が塗った壁。家族の記憶が染み込んだ壁。
その価値を判断するのは、最終的には、あなた自身です。
迷ったら、まず相談してみてください。間宮さんや生田さんのような左官のプロが、きっとあなたの壁を、丁寧に見てくれるはずです。
「左官の世界は常に進化している」。生田さんのこの言葉が示すように、10年前にはできなかった選択肢が、今はあるかもしれません。
土壁で困ったとき、この記事を思い出していただければ幸いです。
