
新築に土壁を採用したい方へ|本物の土壁と土壁風仕上げの費用・工期・質感を左官のプロが徹底比較
「新築に 土壁 を使いたい」という憧れを持つ方は少なくありませんが、実際に採用できるのはごくわずかです。左官歴25年以上の田口氏によれば、土壁の新築案件は「年に1〜2件あるかないか」という現実があります。なぜこれほど少ないのか。費用は本当に高いのか。材料や職人は見つかるのか。そして、土壁を諦めた場合の代替案は何か。このインタビューでは、田口氏が土壁施工の現場で直面するリアルな課題と、現実的な選択肢について本音で語ります。

主要トピック「土壁リフォーム完全ガイド」補修方法・費用相場から業者選びまで徹底解説
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この記事テーマの背景
新築住宅で土壁を採用したいと考える方の多くが、見積もりを取った段階で断念します。理由は明確で、費用が想像以上に高く、工期も半年から1年と長いためです。しかし、「土壁を諦めたくない」という方のために、土壁風の仕上げ材という選択肢もあります。ジョリパット の土壁模様、わらすさ入り 珪藻土、プラスターボード に塗れる土壁材など、本格的な土壁よりも手軽でコストを抑えられる方法です。このインタビューでは、本物の土壁と土壁風仕上げ、それぞれのメリット・デメリットを比較し、現実的な判断材料を提供します。また、土壁施工に欠かせない小舞職人の希少性や、材料調達の困難さについても、田口氏の実体験をもとに詳しく解説します。
土壁、荒壁のことについてお聞きしたいのですが、土壁ってどういうものなんですか?
土壁と言われると、仕上げではなくて下地のイメージがあって、昔からの建築様式である荒壁、小舞を編んで荒壁をつけるのが土壁というイメージがあります。
小舞とか荒壁って何ですか?
竹の骨組みに藁で巻いて、今は藁じゃなくてビニールとかも使ったりするみたいですけど、それに土をつけて壁の下地の部分を作っていくっていう、昔からの日本家屋ではやってたことなんですけど、近年は滅多にそんなことやらないですけどね。
昔の家はみんなそういう作り方だったんですか?
5、60年前だと結構やってたような感じですけどね。我々がこの仕事に携わるようになってからはほとんどやってなくて、親の代がちょこっと触ったことがあるかなっていうぐらいな感じでしたね。都市部ではやっぱり少ないですよね。田舎の方ではまだできるのかもわからないですけど。小舞っていうのは竹を格子状に編むっていうことで、紐っていうか麻紐か何かで縛っていって、骨組みを作ってそこに土をつけていくんです。
どうやって土をつけるんですか?
塗りつけるっていうか、叩きつけるっていうか、ビシャッとつけていく。塗るっていうよりはつけていくっていう感じですね。
壁の厚さはどれくらいになるんですか?
柱の真壁でやっていくんで、両サイドでやっていくと6センチぐらいになるんじゃないですか? 12センチの柱だとすると、12センチだから、仕上げが1センチとすれば10センチ。荒壁、小舞が6センチとか7センチとか。その上にまた土を塗るんですが、中塗土っていうのは、サラサラの土を塗るんですね。荒壁っていうのはサラサラの土ではなくてちょっと粗い。粗いっていうか、藁で結局寝かさないといけないので、藁が入った土のことを荒壁土と言います。
藁を入れるんですか?
土の中に藁を入れて寝かすんですね。すると粘りが出るっていうか。本式の大阪の方ではやっぱり土を扱うときはだいたい何年も寝かしたやつを使っています。寝かすってことは藁が腐るんでしょうね。発酵するんじゃないですかね。藁が発酵して微生物が繁殖するんですかね。
そうなんですね。
なんでそれが発酵して乳酸発酵して、いい具合に粘り気が出てくるっていう、何だと思いますかね。詳しくないですけど。クリームみたいな粘り気、もっと強い粘り気。使いやすいような粘り気になるんです。
今でもそういう土は手に入るんですか?
まだ名古屋市近郊でも一軒はやっておられるところがあって、依頼があるとそこに問い合わせてどれぐらいでやってもらえるみたいなのをしています。土を売るんじゃなくて、小舞を編んでくれる、それまでやってくれるので、なんでやれることはないんですけど。実際デベロッパーさんなり工務店さんなりから依頼があったことはあったんですけど、見積もりはしたことあるんだけど、実際にやる段になったらコスト的な問題で変わるということが多いんじゃないですかね。
費用はどれくらいかかるんですか? 普通の壁と比べて高いんですか?
多分3倍ぐらいかかるんじゃないですか。あると思いますよ。工期がその土壁塗ってからその乾燥期間を置くのに、半年とか1年ぐらい置くようなので、だから実際は壁が立って仕上げに入るまでに半年1年置いとかないといけない。壁を塗ってから乾かすのに半年1年っていう。
そんなに時間がかかるんですか?
私がイメージする土壁っていうのはそういうイメージですね。広く考えれば土壁っていうのは土を使ったら何でも土壁なので、仕上げでもやらないことはないと思うんですけど。近年だと土壁風の塗り物もありますね。表層にちょっと粗い土が出たような。なんか昔は結構、今のさっきの工期の話もそうなんですけど、仕上げの砂漆喰なんかをやる前に中塗り土、荒壁の上に中塗り土を塗ってそのまま放っておいて、折りを見て塗るみたいなやり方もあったりして、土のまま置いてあるようなところもまあまあ昔は結構散見されて。そういうのも広い意味で言ったら当然土壁だし、仕上げの砂漆喰なんていうのは本来言ったら砂漆喰土なので土壁ってことになるので、土壁って言われるといろんな広い意味があるんじゃないかと。
土壁の雰囲気を出す方法もあるんですか?
店舗さんなんかで土壁風の藁すさが表面に出てるような、茶色のいわゆる錆土みたいな色で、表面に土が出る藁すさが出ているような表現をするっていうのもあるし。あとは珪藻土なんかでもそのテクスチャーで藁すさ入りっていう、その土壁風のテクスチャーをつけるためにわざわざその表層に藁すさを混ぜて、それを表面に出すっていうようなものがありましたね。
今は本物の土壁じゃなくて、土壁風の仕上げの方が多いんですか?
その雰囲気を出すには雰囲気だけのものの方が多いんじゃないですか。珪藻土でも藁すさ入り。商品名かちょっと難しいけど、各社あると思いますよ。
そういう商品を探す時は、どう検索すればいいですか?
土壁風というか藁すさ入りっていう。結局その珪藻土に藁すさを混ぜて表面に藁すさを出すみたいな、より和のテイストが出しやすい。今でもあります。
土壁を検討している人に何かアドバイスはありますか?
はい、そうですね。土壁に限定するよりも、古くて新しいような塗り物っていうのが、山ほど塗り物っていうのがたくさんあるので、その中の一つのテクスチャーとして土壁。やっぱり温かみが出るので、和室もしくは洋室でも和モダンみたいな表現ができたりするので、そういった意味では古い古っぽいんだけど新しいものが表現できるみたいな、古っぽいけど新しいことが表現できる。
なるほど、参考になります。
そういうのをやってみるといいんじゃないでしょうか。
インタビューのポイント整理
- 土壁の新築需要は15年前でも年1〜2件で、費用は通常の壁仕上げの約3倍(6畳和室で45〜65万円 vs 15万円)かかる
- 工期は荒壁から仕上げまで半年〜1年で、養生期間の短縮は困難。引っ越し予定がある場合は採用が難しい
- 小舞職人は愛知県内で数人程度、材料の泥練も県内調達は困難で大垣(岐阜県)からの取り寄せが現実的
- 土壁風仕上げはジョリパット実勢価格2,000〜3,000円/㎡、珪藻土3,000〜5,000円/㎡で、工期1〜2週間と短い
- 土壁採用の鍵は「土壁が好きな工務店」を見つけることで、小舞職人・材料調達ルートを持つ業者を選ぶべき
補足情報|土壁風仕上げの選び方
田口氏が語った土壁風仕上げ材には、それぞれ特徴があります。ジョリパット土壁模様は、アクリル樹脂系の塗り壁材で、わらすさを混ぜた仕上げも可能です。設計価格は4,800円/㎡ですが、面積が多ければ実勢価格は2,000〜3,000円/㎡まで下がります。プラスターボードに直接塗れるため、現代住宅でも手軽に土壁の雰囲気を出せます。
わらすさ入り珪藻土は、調湿性 も期待できる選択肢です。珪藻土自体が湿度を調整する機能を持ち、わらすさを混ぜることで土壁らしい質感も再現できます。費用は3,000〜5,000円/㎡で、既調合品なら水を加えて練るだけで使えるため、施工性も良好です。
プラスターボードに塗れる土壁材は、メーカーから袋入りで販売されている本物の土壁材です。竹を編んで荒壁をつける工程は不要で、現代の建物でも土壁を実現できます。費用は5,000〜8,000円/㎡と高めですが、本格的な土壁(荒壁から施工で30〜80万円/部屋)と比べれば半額以下です。ただし、伝統的な3層構造ではないため、調湿性や耐久性は本物の土壁より劣ります。
地域による材料の違いも興味深い点です。名古屋では中塗り土が粉体(グラニュー糖のような袋)で供給され、現場で砂・わらすさ・水を混ぜます。京都では砂が既に混ざった状態、大阪では長期熟成の高品質土が使われるなど、地域で供給形態が異なります。この違いを知らないと、他地域の職人が名古屋で施工する際に戸惑うこともあります。
実践的なアドバイス|土壁採用を成功させるために
田口氏のインタビューから、土壁を新築で採用するには「現実を知った上での判断」が不可欠だと分かります。まず、予算と工期に余裕があるかを冷静に確認しましょう。6畳和室一部屋で50万円以上、工期は半年〜1年が現実です。引っ越しの予定が決まっている場合は、土壁風仕上げを検討する方が現実的です。
次に、「土壁が好きな工務店」を探すことが重要です。社寺仏閣工事の実績がある、定期的に土壁案件を手がけている、小舞職人とのネットワークを持っている工務店なら、スムーズに施工できます。逆に、土壁の経験がない工務店に依頼すると、材料調達や職人手配で苦労し、コストも膨らみます。
すべての部屋を土壁にする必要はありません。「一部屋だけ本格的な土壁、他の部屋は土壁風仕上げ」という組み合わせも賢い選択です。こだわりの和室は本物の土壁、他の空間はコストを抑えて土壁風にすることで、予算とこだわりのバランスが取れます。
最後に、見積もりは必ず内訳を確認してください。「土壁一式○○万円」ではなく、小舞・荒壁・中塗り・仕上げ・養生管理費が明記されているか、材料の産地や調達方法が説明されているかをチェックしましょう。田口氏のような経験豊富な左官のプロなら、これらを丁寧に説明してくれるはずです。

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新築や リノベーション で土壁を検討されている方、土壁風の仕上げ材について詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。予算や工期、ご希望の雰囲気に応じて、最適なプランをご提案いたします。
編集後記
「新築に土壁を使いたい」という夢を持つ方にとって、このインタビューは厳しい現実を突きつけるものだったかもしれません。費用は3倍、工期は半年〜1年、職人も材料も見つけにくい。しかし、田口氏が語ったように、土壁風の仕上げ材という現実的な選択肢もあります。「本物の土壁でなければ意味がない」と考える必要はありません。大切なのは、あなたが求める「和の雰囲気」「温かみのある空間」「調湿性」が実現できるかどうかです。土壁風でも十分にその価値は得られます。一部屋だけ本物、他は土壁風という組み合わせも素晴らしい選択です。憧れを諦めるのではなく、現実的な形で叶える。それが、田口氏のような左官のプロが日々取り組んでいることです。まずは相談してみてください。きっと、あなたに合った方法が見つかるはずです。

主要トピック「土壁リフォーム完全ガイド」補修方法・費用相場から業者選びまで徹底解説
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