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オンザウォール社 村上氏インタビュー

イタリア発・天然熟成漆喰ピュアライムとは?カラーラ・ダイヤモンドシステムで実現する重厚感ある塗り壁の世界

漆喰」と聞くと、日本の土壁や和風建築を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし今、世界の内装トレンドは天然素材(自然素材)の重厚感と テクスチャー 表現へと大きくシフトしています。イタリア発の デコラ社 が手がける ピュアライム は、何年もかけて熟成させた天然素材99%の西洋漆喰。カラーラ 大理石粉を配合した圧倒的な白さと滑らかな施工性は、左官職人はもちろん、塗装屋や防水屋にも扱えるボーダーレスな素材として日本の住宅・店舗内装に新たな可能性をもたらしています。

この記事を読んで欲しい人

  • 自然素材にこだわった上質な内装仕上げを検討している施主・設計士の方
  • モールテックス や ジョリパッド に限らず、新しい塗り壁材の可能性を広げたい左官・塗装・防水などの職人の方
  • 店舗内装で差別化できるテクスチャー表現や不燃対応の素材を探しているインテリアデザイナーの方
オンザウォールのロゴ

企業紹介

2011年に静岡県で創業した左官仕上げ材の専門メーカー。住空間における壁面の可能性を追求し、個性豊かな表情を持つ塗り壁材を提供している。天然系塗り壁材の製造・輸入・販売を一貫して手がけ、日本の伝統的な左官技術に現代的な感性と効率性を融合させた製品開発を行っている。

村上哲之介代表取締役

村上哲之介氏(オンザウォール代表取締役)

1973年、神奈川県生まれ。ハウスメーカーにて12年間のキャリアを積んだ後、2011年に創業。現在、販売パートナーは50社を超える規模へと事業を拡大している。

まずはオンザウォール社のご紹介

オンザウォールの歩みと、西洋漆喰との出会い

神谷 本日はよろしくお願いします。村上社長、まず自己紹介をお願いします。
村上 株式会社オンザウォールの代表をしております。今年で創業16年目になります。本社は静岡市にありますが、現在は東京の事務所に居ることが多くなっています。元々は軽装土・漆喰の製造メーカーとしてスタートし、自然素材の塗り壁材を普及させることで、より良質な室内空間を作れるようにしたいという思いでやり始めました。その延長で、自社製品では実現できない意匠性を補うため、西洋漆喰 を中心に海外の材料を輸入・販売するようになりました。
神谷 オンザウォールさんの主力商品は何でしょうか?
村上 自社でオリジナルの漆喰や 珪藻土 を作っております。ただしファブレスといいまして、工場を持たない会社です。iPhoneを扱うアップル社のように、製品の開発は日本でやりながら海外で製造してもらい日本に戻すという形が主力になります。それに加えて、西洋漆喰を中心にヨーロッパ・アメリカの材料を扱うようになっています。
神谷 ファブレスメーカーは左官業界では珍しいのでしょうか?
村上 おそらく他にはないと思います。海外から輸入して販売するインポーターという形はあると思いますが、生産拠点を持たずに海外に生産委託するというのはかなりレアなケースだと思います。

ピュアライムの特徴を解説

デコラ社とピュアライムが生まれた理由

神谷 今回はデコラ社の ピュアライム をご紹介いただくのですが、まずピュアライムとは何かご説明をお願いできますか?
村上 ピュアライムというのは西洋漆喰の中でも天然度の高いものを指す言葉です。一般的なヨーロッパの漆喰は「既調合漆喰」と呼ばれ、石灰石 を焼成して水を混ぜた後に本来必要な熟成期間を省き、接着剤などを加えて製品化したものです。それに対してピュアライムは、フレスコ画で使うような天然素材を何年も熟成させて作ったもので、材料同士が結晶化して馴染むため、塗ってみると明らかに滑らかで塗りやすいのが特徴です。
神谷 イタリアのデコラ社とお付き合いになった経緯をお聞かせください。
村上 弊社は現在4社のイタリアの材料メーカーと取引があり、合計20ブランドほど扱っています。イタリアでは国ごとに1ブランドしか扱えないという慣習が今も残っており、複数社を扱うことは通常ありえないのですが、弊社はそれができています。その最初のきっかけはベネチア北にある「サンマルコ」という会社との取引でした。デコラ社の社長・ルイージ氏はもともとサンマルコでアジア担当をしており、シンガポール・タイ・マレーシア・中国・韓国・オーストラリアなどをまとめていた人物です。高温多湿のアジアで欧州の材料を販売するには特殊なノウハウが必要で、そのアジア向け対応を一手に担っていたのが彼でした。その後ルイージ氏がサンマルコを離れて自分のブランドを立ち上げる際に、弊社に声をかけてくれました。私はサンマルコとの直接取引があったのですぐには動けませんでしたが、サンマルコと異なる材料であれば協力するということで、デコラ社ともお取引を始めたという経緯です。
神谷 ヨーロッパの漆喰をそのまま日本に持ってきても気候的に合わない問題があるかと思いますが、その点はいかがですか?
村上 まさにその通りで、欧州の材料は「施工後72時間は雨に当てないでください」という説明書きが一般的です。梅雨や台風の時期にそのリスクを負うのは日本では現実的ではありません。デコラ社はアジアの気候に合わせた材料改良を継続してきた会社ですので、その問題に対応できています。
神谷 ヨーロッパと日本の職人さんで施工上の違いはありますか?
村上 日本の職人さんはコテ板に大量の材料を乗せて大きなコテでスピード重視に塗っていきますが、ヨーロッパの職人はコテ板を使いません。容器から少量をヘラですくって直接つけていく塗り方です。向こうは一発塗りを前提とせず、2度塗りで厚みと重厚感のあるテクスチャーを作るのが基本ですので、急ぐ必要がそもそもないんです。こういった施工スタイルの違いが材料の設計にも影響しています。

ダイヤモンドシステムとは何か?

カラーラ・ダイヤモンドシステム・ティセオの実力と可能性

神谷 デコラ社の「ダイヤモンドシステム」と「カラーラ」についてご説明いただけますか?
村上 デコラ社最大の特徴は約99%が天然素材でできているという点です。糊の部分だけ微量の有機系材料を使っていますが、それ以外はフレスコ画に使うような天然素材を何年も熟成させて作っています。ダイヤモンドシステムはその天然漆喰に加えて、モールテックスなどで流行っている マイクロセメント に相当する材料です。カラーラは16種類ある天然漆喰のうちの一つで、「世界一白い」とも言われるカラーラ産の大理石粉を配合しており、天然素材でありながら非常に白い仕上がりになるのが特徴です。弊社では標準的にご用意しています。
神谷 カラーラの派生型である「ティセオ」の特徴も教えてください。
村上 16種類の材料はそれぞれ表現できるテクスチャーが異なります。ティセオは今ヨーロッパで流行しているミネラル系、石っぽいゴツゴツしたラフな表情を作る材料です。骨材をかなり大きめのものまで配合しています。カラーラは大理石粉による細かい粒子で、滑らかで重厚感のある陰影のあるテクスチャーになります。この違いのために16種類は必要なのだというのがルイージ社長の強い主張です。
神谷 金額的な目安を教えていただけますか?
村上 工程はプライマーを塗ってから材料を2回塗り、最後に押さえをかけるという流れです。金額の目安として、一缶が約2万円で2度塗りで約10平米塗れますので、材料費は約2,000円/平米。副資材やプライマーを含めると約3,000円/平米が一つの基準です。職人さんの工賃やテクスチャーの複雑さによってそれ以上になります。
稲熊 カラーラについてですが、松坂の店舗工事で塗装屋さんが施工しているのを見たのですが、施工は塗装屋さんの方が多いのでしょうか?
村上 そんなことはありません。弊社としてはできるだけボーダーレスにしたいという方向性がありまして、塗装屋さん・タイル屋さん・防水屋さんなど、様々な職種の方が施工できるよう指導しています。西洋漆喰は2度塗りの工程で1度目の多少の荒さは2度目でカバーできるため、日本漆喰ほどの高度な技術が必要ありません。参入障壁が低いんですね。また サンディング が可能なので、機械で平滑に仕上げることもできます。
稲熊 そういった職人さんの方がいい柄が出ることはあるんですか?
村上 実はあります。左官屋さんは長年の癖が染みついていて、土間の塗り方やジョリパッドの塗り方を自然にやってしまいます。西洋漆喰はコテ板を使わず少量を小さいコテでつけていくのが本来のやり方なので、コテ板を使えない他業種の職人さんが少量で細かくつけた方が、かえって良いテクスチャーになることがあります。
間宮 カラーラやティセオは粉体ではなく、最初から練り状態で来るのでしょうか?
村上 はい、弊社はほぼすべてプレミックスの練り状態で取り扱っています。
田口 店舗工事をよくやるのですが、デコラ社の商品が指定されることがこれまであまりなく、見積もりもしたことがありません。大手の店舗へのアピールはされているのでしょうか?
村上 東京に事務所を出した主な理由はそのためです。すでに工事も受けており、デザイナーや設計士が求めるテクスチャーをいかに正確に再現できるかを提案しています。どんなテクスチャーの写真を見せられてもサンプルで断られたことはほぼありません。ただ材料名だけで売るのは難しく、実績と表現力を合わせて提案する方が店舗系には響きます。カラーラはあくまで手段の一つです。
田口 自宅のキッチンに 珪藻土 を塗っているのですが、油汚れが染みてしまいました。DIYで対処するとしたらおすすめの方法はありますか?
村上 珪藻土は気孔が大きいので油が染み込んでしまうと取れにくいです。そういった場合には専用のワックスを上から塗ることで、染みを防ぐケアが可能です。
生田 最初は気難しい材料かと思っていたのですが、防水屋さんでもできるというお話を聞いて、左官屋さんに限らない可能性の広さに驚きました。
谷澤 16種類というのは、テクスチャーが16種類なのか、材料が16種類でそれぞれからさらにテクスチャーが出るのかどちらですか?
村上 後者です。16種類の材料それぞれからテクスチャーが表現できます。材料ごとに成分が異なり、添加物や骨材の違いが接着力や重量に影響しますので、伊達に16種類作っているわけではありません。表現者のニーズに応えるために必要な数だとルイージ社長は強く言っています。
谷澤 店舗の仕事では不燃認定を求められることが多いのですが、デコラ社の商品はどうでしょうか?
村上 デコラ社の商品はすべて石灰の含有量が35%以上ありますので、日本の漆喰工業会の基準により「漆喰・告示対象外」として不燃認定の取得が不要です。見積書や仕様書にその旨を記載していただければ問題ありません。
伊藤 シチリアが本社のデコラ社ですが、イタリア本土と日本国内でテクスチャーやデザインのニーズに違いはありますか?
村上 違いはあります。ヨーロッパのトレンドが数年遅れて日本に入ってきたり、逆にオリエンタルな素材感が向こうで評価されたりと、今は混在した状態です。今ヨーロッパで流行しているのはマット系・自然素材で、ピュアライムがアジア向けに開発されたにもかかわらず欧州で逆に流行し始めています。また古いレンガの粉を漆喰に混ぜた循環系の素材「コッチョペスト」や、遺跡を思わせる土系の素材なども新商品として出てきています。一方で日本ではモールテックスが流行しましたが、欧州ではとっくに飽きられており、マイクロセメント系は今や弊社だけで5種類扱っています。
伊藤 DIYでこの商品にチャレンジした事例はありますか?注意点があれば教えてください。
村上 マイクロセメントで1平米ほどのテーブルを塗るケースが徐々に出てきています。成功している理由はサンディングが効くからで、多少うまく塗れなくても最終的に削って仕上げることができます。弊社でもDIY向けのラインナップを10種類ほど用意していてローンチ寸前です。また「一人で塗れるもん」という名前でホームセンターにも卸しています。
伊藤 モールテックスで検索すると一般の方が塗ったテーブルが出てきて、DIY市場への広がりを感じます。市場性に合わせた商品展開を進めていただけるのは業界にとってもありがたいです。
村上 補足として、マイクロセメントというカテゴリーは定義が曖昧で、今はセメントが入っていない製品でもマイクロセメントと呼ばれています。ダイヤモンドシステムもセメントは入っていません。セメントが入っていない方が施工も仕上げも扱いやすいのですが、一般の方がセメント系と同じ感覚で扱うと接着不良やクラックが起きることがあります。アクリルで補強したり見た目を近づける方向で対処するのが現状のトレンドです。
神谷 稲熊さんのショールームでオンザウォールさんの商品を実際にご覧いただく機会を設けたいと思っています。最後に稲熊さんから一言いただいて終了にしたいと思います。
稲熊 言葉では聞いていてもわからない部分が多々ありますので、ぜひ実物を触りながらいろいろと教えていただけるとありがたいです。本日はありがとうございました。
神谷 本日はこれで終了といたします。良い週末をお過ごしください。

高品質なイタリア漆喰の性能と内装提案についてインタビュー

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編集後記

「壁を塗り替えたいけど、どの素材を選べばいいかわからない」——そんな悩みを抱えるエンドユーザーは少なくありません。長年左官の現場に携わってきた経験から言えば、素材選びに正解はなく、その空間で何を感じたいかが出発点です。天然素材の塗り壁は、完成した瞬間より時を重ねるごとに味わいが増していきます。失敗を恐れず、まずは小さな壁一面から試してみてください。本物の素材は、きっとあなたの暮らしに静かな豊かさをもたらしてくれるはずです。

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