
聚楽壁と砂壁の違いとは?梨地肌・触感・素材から徹底比較【見分け方も解説】
和室の壁材として古くから使われてきた聚楽壁と砂壁。見た目が似ているため、自宅の壁がどちらなのか分からないという方も多いのではないでしょうか。実は、この二つは素材も質感も大きく異なる別物です。本記事では、左官のプロ・生田氏へのインタビューをもとに、聚楽壁と砂壁の違いを徹底比較。「梨地肌」という聚楽壁特有の質感、触ったときの「ふんわり」と「カチッと」の違い、砂と土という素材の違いまで、プロの視点から分かりやすく解説します。和室リフォームで壁材選びに迷っている方、自宅の壁がどちらなのか知りたい方は必見です。
- 自宅の和室の壁が聚楽壁なのか砂壁なのか判断したい方
- 和室リフォームで聚楽壁か砂壁かを選ぶ際の判断材料が欲しい方
- 聚楽壁と砂壁それぞれの特徴とメリット・デメリットを知りたい方

主要トピック「聚楽壁とは何か 完全ガイド」
こちらの関連記事では、総合的に「聚楽壁」について解説しています。この記事の後に是非ご一読下さい。

聚楽壁と砂壁の基本的な違い|素材・質感・触感を比較
聚楽壁と砂壁は、どちらも和室の伝統的な塗り壁材ですが、その特徴は大きく異なります。まずは基本的な違いを理解しましょう。
素材の違い:土 vs 砂
最も根本的な違いは、主成分となる素材です。
聚楽壁:土ベース 聚楽壁は、土をベースにした塗り壁材です。細かい土に木粉や骨材、色粉などが配合されています。本来は京都の聚楽土を使用したものが「本聚楽」と呼ばれますが、現在市場に出回っているのは、建材メーカーが製造する聚楽風の既調合製品がほとんどです。
砂壁:砂ベース 一方、砂壁は砂をベースにした塗り壁材です。細かい石の粒が主成分で、聚楽壁よりも粒子が大きいのが特徴です。砂の粒感がはっきりと見えるため、視覚的にも聚楽壁との違いが分かります。
この素材の違いが、質感、触感、仕上がりの印象に大きく影響します。
質感の違い:梨地肌とは何か
聚楽壁の質感を表現する際に、左官職人がよく使う言葉が**「梨地肌(なしじはだ)」**です。
これは文字通り、果物の梨の皮のような質感を意味します。梨の表面を思い浮かべてください。細かいボコボコとした凹凸があり、ザラザラしながらも全体的には滑らかな印象がありますよね。聚楽壁の表面も、まさにこの梨の肌のような繊細な質感を持っています。
細かい粒子が作り出す微細な凹凸が、光の当たり方によって陰影を生み、奥行きのある表情を見せます。この梨地肌が、聚楽壁特有の落ち着いた風合いを生み出しているのです。
一方、砂壁は粒が大きく、より粗めのザラザラ感があります。梨地肌のような繊細さよりも、はっきりとした粒感が特徴です。近づいて見ると、小さい石の粒が入っているのが目視で確認できます。
触感の違い:ふんわり vs カチッと
見た目だけでなく、触ったときの感触も大きく異なります。
聚楽壁:ふんわり・柔らかい 聚楽壁を手で触ると、「ふんわり」とした柔らかい感触があります。表面に適度な弾力があり、温かみのある肌触りです。これは、土をベースにしていることと、木粉などが配合されているためです。指で軽く押すと、わずかに沈むような感覚があります。
砂壁:カチッと・硬い 対して砂壁は、「カチッと」硬い感触です。表面がしっかりと締まっており、押しても沈みません。砂の粒子が密に固まっているため、冷たく硬質な印象を受けます。
この触感の違いは、実際に触って比べてみると誰でもはっきりと分かります。自宅の壁がどちらか分からない場合、手で触ってみることが簡単な見分け方の一つです。
価格の違い:どちらもお値打ち
価格面では、聚楽壁と砂壁に大きな差はありません。
平米単価:5,000円〜6,000円程度 6畳間:9万円〜12万円程度
どちらも、漆喰や珪藻土などの他の塗り壁材と比較すると、比較的リーズナブルです。左官のプロの間では「値段的にお値打ち」という評価があり、和室の壁材としては標準的な価格帯に位置しています。
クロス(壁紙)よりは高価ですが、漆喰よりは安価というポジションで、塗り壁の質感を求めつつ予算を抑えたい方に適しています。
左官のプロ・生田氏に聞く|聚楽壁と砂壁の違いの本質
ここからは、実際に聚楽壁と砂壁の施工経験が豊富な左官のプロ・生田氏へのインタビューをご紹介します。現場で培った知識と経験に基づく、実践的なアドバイスが満載です。
聚楽壁って何ですか?
聚楽壁っていうのは京都発祥の土壁みたいな感じですね。
最近も使われているんですか?
ここ最近はあんまり施工してないですけど、10年ぐらい前はちょこちょこっていう感じですかね。
あまり見なくなったんですね。
最近だとやっぱり和風な建築自体も減ってきてるっていうのもあるんですかね。洋風なお家だとどうしても珪藻土だとか漆喰だとかに押され気味な感じですが、和室の改修だとか塗り替えでたまに塗ることはありますけどね。
今はどんな壁が人気なんですか?
今やっぱり和室だと聚楽だとちょっとボロボロしてくるっていうお客さんもいるもんで、砂壁っていう商材を塗ったりだとか、和室でも珪藻土を塗ることもあります。
聚楽壁って渋くて落ち着いた感じがしますよね。
落ち着いた感じなんですね。
聚楽壁と砂壁って何が違うんですか?
聚楽は仕上がりが梨地肌って言うんですけど、果物の梨の肌みたいな質感。ちょっとボコボコしてるというか、ザラザラしてる感じの質感って言うんですかね。
砂壁の触った感じはどうですか?
砂壁はどちらかというとカチッとしてるというか、表面を触ると硬い感じなんですけど、聚楽のほうがややふんわりしてるというか、素材の違いですよね。砂と土で質感が違うんです。
和室だとどっちが多いんですか?
砂壁か聚楽壁が多いですね。値段的にも割にお値打ちかなと思いますので。漆喰とかに比べると。
聚楽壁って漆喰より安いんですか?
そうですね。ただ、安価と言っちゃうとあれですけど、いわゆる聚楽土風っていう感じなんですかね。いわゆる京都の聚楽という土地で取れたのを本聚楽っていうような感じがして、それを模倣したのが聚楽風っていう感じな認識ですかね。
おすすめの商品とかありますか?
うちはよく売ってたのが四国化成のジュラックスC。色もたくさんあるので、和風にも洋風にも合うかもしれないですね。
聚楽壁ってどんな場所に向いてるんですか?
やっぱりこの古くなってきた和室を洋風に変えるっていうよりも、和室は和室のまま壁を塗り替えてきれいにしていただくと、より雰囲気が出るのかなと思います。ただこのDIYでやっぱり壁を塗るっていうのはなかなか難しいと思いますので、そういう時は是非プロの方にお願いするのがいいのかなと思います。
塗り替えを頼むならどこがいいですか?
壁談に相談していただければと思います。聚楽壁の塗り替えは得意な方ですし、好きですね。お気軽にお問い合わせしてもらいたいですね。

聚楽壁と砂壁の見分け方|目視・手触りでチェック
生田氏のインタビューから、聚楽壁と砂壁の見分け方が明確になりました。実際に自宅の壁がどちらなのか判断する方法を見ていきましょう。
粒の大きさで見分ける
最も分かりやすい見分け方は、粒の大きさです。
聚楽壁:細かい粒 聚楽壁は非常に細かい粒子で構成されており、近づいて見ても個々の粒がはっきりとは見えません。全体的に均一で、繊細な質感です。
砂壁:大きめの粒 生田氏が「砂壁は、小さい石の粒が入っているようなイメージですかね。細かい石の粒が入っている」と説明しているように、砂壁は粒が大きく、目視ではっきりと粒感が確認できます。
見分けるポイント: 壁に近づいて、表面をよく観察してください。粒がはっきり見えるなら砂壁、細かすぎて粒が判別しにくいなら聚楽壁の可能性が高いです。
触感で見分ける
生田氏が最も強調していたのが、触ったときの感触の違いです。
聚楽壁:ふんわり柔らかい 「聚楽のほうがややふんわりしてるというか」という表現の通り、聚楽壁は手で触ると柔らかく、温かみのある感触があります。指で軽く押すと、わずかに沈むような弾力を感じられます。
砂壁:カチッと硬い 「砂壁はどちらかというとカチッとしてるというか、表面を触ると硬い感じ」と生田氏。砂壁は表面がしっかりと固まっており、押しても沈みません。冷たく、硬質な手触りです。
見分けるポイント: 壁を手のひらで触ってみてください。柔らかく温かみがあれば聚楽壁、硬く冷たい感じがすれば砂壁です。この違いは誰でもはっきりと感じ取れます。
表面の凹凸パターンで見分ける
質感の違いも重要な判断材料です。
聚楽壁:梨地肌 生田氏が「仕上がりが梨地肌って言うんですけど、果物の梨の肌みたいな質感。ちょっとボコボコしてるというか、ザラザラしてる感じの質感」と説明しているように、聚楽壁は繊細な凹凸が特徴です。
果物の梨の皮を思い浮かべてください。細かいボコボコとザラザラが混在した、独特の質感です。光の当たり方によって陰影が生まれ、表情が変化します。
砂壁:粗めのザラザラ 砂壁は、梨地肌よりも粗く、はっきりとしたザラザラ感があります。粒が大きい分、凹凸も大きくなります。
見分けるポイント: 壁に横から光を当ててみると、凹凸のパターンがよく分かります。繊細な凹凸なら聚楽壁、粗めの凹凸なら砂壁です。
プロに確認してもらうのが確実
ただし、生田氏も認めているように、素人が完全に見分けるのは難しい場合もあります。
「見分ける方法は、よく似てるんですよ。目がすごい細かいんで、どちらも」という言葉の通り、聚楽壁と砂壁はパッと見では区別がつきにくいこともあります。
特に、現代の製品は技術が進化しており、聚楽風の砂壁や、砂壁風の聚楽壁など、境界が曖昧な製品も存在します。
**確実に判断したい場合は、左官のプロに現地調査を依頼しましょう。**経験豊富な職人であれば、目視と手触りだけで即座に判別できます。塗り替えを検討している段階であれば、見積もり依頼時に確認してもらうのが最も確実です。
聚楽壁と砂壁、どちらを選ぶべき?メリット・デメリット比較
自宅の壁がどちらなのか分かったところで、次は「どちらを選ぶべきか」という問題です。それぞれのメリット・デメリットを比較しましょう。
聚楽壁のメリット・デメリット
メリット:
- **落ち着いた風合い:**生田氏が「落ち着いた感じ」と表現するように、聚楽壁は和室に静謐な雰囲気をもたらします
- **梨地肌の繊細な質感:**細かい凹凸が生む奥行きのある表情が魅力
- **ふんわりとした柔らかい触感:**温かみのある手触り
- **価格がお値打ち:**漆喰と比べて安価
- **伝統的な和の雰囲気:**京都発祥の歴史ある壁材
デメリット:
- **ボロボロしてくることがある:**生田氏も「聚楽だとちょっとボロボロしてくるっていうお客さんもいる」と指摘
- **柔らかいため傷つきやすい:**砂壁より表面強度が低い
- **需要が減少している:**最近は施工機会が減っている
- **洋風住宅には合わせにくい:**和室向きの壁材
砂壁のメリット・デメリット
メリット:
- **表面が硬く傷つきにくい:**カチッとした硬さが耐久性につながる
- **粒感のあるしっかりした質感:**モダンな印象も作れる
- **ボロボロ落ちにくい:**聚楽壁よりも劣化しにくい傾向
- **価格がお値打ち:**聚楽壁と同程度
- **和室で今でも選ばれる:**生田氏も「砂壁っていう商材を塗ったりだとか」と現役
デメリット:
- **硬く冷たい触感:**温かみは聚楽壁に劣る
- **粗めの質感:**繊細さでは聚楽壁に及ばない
- **粒が大きく主張が強い:**好みが分かれる
- **需要が減少している:**聚楽壁同様、最近は少ない
おすすめの製品(四国化成ジュラックスC)
聚楽壁を選ぶ場合、生田氏がおすすめするのは四国化成のジュラックスCです。
「うちはよく売ってたのが四国化成のジュラックスC。色もたくさんあるので、和風にも洋風にも合うかもしれないですね」
ジュラックスCの特徴:
- **豊富なカラーバリエーション:**和室だけでなく洋室にも対応
- **業界シェアNo.1:**多くの左官職人が使用
- **信頼性の高い大手メーカー製品:**品質が安定
- **施工実績が豊富:**トラブルが少ない
砂壁の場合も、各メーカーから製品が出ていますが、施工実績が豊富で信頼できる製品を選ぶことが重要です。
実際の選ばれ方の傾向
生田氏のインタビューから見える現在の傾向は以下の通りです:
聚楽壁・砂壁ともに需要減少: 「ここ最近はあんまり施工してないですけど、10年ぐらい前はちょこちょこっていう感じ」という言葉通り、どちらも新築での採用は減っています。
和風建築自体の減少: 「和風な建築自体も減ってきてるっていうのもある」ことが、聚楽壁・砂壁の需要減少の背景にあります。
他の壁材に押され気味: 「洋風なお家だとどうしても軽装土だとか漆喰だとかに押され気味」という状況です。
それでも和室改修では現役: 「和室の改修だとか塗り替えでたまに塗ることはあります」とのことで、既存の和室のメンテナンスでは今でも需要があります。
選ぶ基準: 最終的には、「和室は和室のまま壁を塗り替えてきれいにしていただくと、より雰囲気が出る」という生田氏の言葉が示すように、和室の雰囲気を大切にしたいなら聚楽壁か砂壁、機能性や現代的な雰囲気を求めるなら漆喰や珪藻土、という選択になります。
また、「DIYでやっぱり壁を塗るっていうのはなかなか難しいと思いますので、そういう時は是非プロの方にお願いするのがいい」というアドバイスも重要です。仕上がりの美しさを求めるなら、プロに依頼することを検討しましょう。
まとめ|聚楽壁と砂壁の違いを理解して最適な選択を
聚楽壁と砂壁は、見た目は似ていても、素材・質感・触感が大きく異なる別物です。生田氏のインタビューを通じて、その違いが明確になりました。
重要ポイントの再確認
- 聚楽壁は土ベース、砂壁は砂ベースで素材が根本的に異なる
- 聚楽壁は「梨地肌」という繊細な質感で、触ると「ふんわり」柔らかい
- 砂壁は粒が大きく粗めの質感で、触ると「カチッと」硬い
- 粒の大きさ、触感、表面の凹凸パターンで見分けられるが、確実にはプロに確認を
- どちらも価格的にはお値打ちで、漆喰より安く、同程度の費用感
- 聚楽壁は落ち着いた風合い、砂壁は硬く傷つきにくいのがメリット
- 四国化成ジュラックスCが聚楽壁の代表的製品で、色展開も豊富
- どちらも需要は減少傾向だが、和室改修では今でも使われている
選び方のポイント
聚楽壁がおすすめ:
- 梨地肌の繊細な質感が好き
- ふんわりとした柔らかい触感が好き
- 伝統的な和室の雰囲気を大切にしたい
- 落ち着いた空間を作りたい
砂壁がおすすめ:
- 硬くしっかりした質感が好き
- 粒感のあるザラザラした仕上がりが好き
- 耐久性を重視したい
- ややモダンな和室を目指したい
生田氏が最後に述べた「和室は和室のまま壁を塗り替えてきれいにしていただくと、より雰囲気が出る」という言葉は、聚楽壁・砂壁選びの本質を表しています。
和室の持つ落ち着いた雰囲気、日本の伝統的な美意識を大切にしたいなら、聚楽壁か砂壁を選ぶ価値は十分にあります。需要が減少しているからこそ、あえて選ぶことで、他にはない特別な空間を作ることができるのです。
自宅の壁がどちらなのか知りたい方、和室リフォームで壁材選びに迷っている方は、まず左官のプロに相談してみることをおすすめします。実際に触って、見て、違いを確かめることが、最適な選択への第一歩です。
この記事のポイント:
- 聚楽壁は土ベース、砂壁は砂ベースで素材が異なる
- 聚楽壁は「梨地肌」のふんわり質感、砂壁はカチッと硬い
- 粒の大きさと触感で見分けられる
- どちらも価格的にはお値打ちで漆喰より安価
- 和室の雰囲気を大切にするなら聚楽壁・砂壁が最適

主要トピック「聚楽壁とは何か 完全ガイド」
こちらの関連記事では、総合的に「聚楽壁」について解説しています。この記事の後に是非ご一読下さい。
左官の現場で「自宅の壁が聚楽壁なのか砂壁なのか分からない」という相談をよく受けます。どちらも和室の伝統的な壁材で見た目も似ているため、判断に迷われるのは当然です。しかし、実際に触ってみると「ふんわり」と「カチッと」という明確な違いがあります。聚楽壁の「梨地肌」という繊細な質感は、他では得られない独特の魅力です。最近は需要が減少していますが、だからこそ和室の雰囲気を大切にしたい方には価値ある選択肢だと思います。壁材選びで迷われている方は、ぜひ実際に触って、その違いを確かめてみてください。左官のプロがサンプルを持参して説明に伺いますので、お気軽にご相談ください。
株式会社 川幸 代表取締役
対応エリア:名古屋市など愛知県内全域、その他(岐阜、三重、静岡など一部)
対応できる工事:左官工事業・屋根工事業・板金工事業・塗装工事業・防水工事業・内装仕上工事業
お薦めのデザイン:
備考:左官のみならず、住宅の困り事は何でもご相談ください。
<プロフィール>
愛知県高浜市出身、丑(うし)年、かに座
【好きなもの】レバニラ炒め、ペプシコーラ、映画:フォレスト・ガンプ/一期一会、書籍:昭和歴史 昭和天皇関連本、絵画:鏝絵、作家:伊集院静、筆記具:万年筆
【苦手なもの】携帯電話の取り扱い説明書、コカ・コーラ、簿記経理の本、キャバクラの女の子、生温くなったアイスコーヒー
【マイブーム】ボールペンを使いきって、替芯を買う事
